第30話 新戸籍
私は離婚届が提出された事により籍が実家に戻っていたが子供達が宙ぶらりんの状態になっているので家庭裁判所に行きその事情を説明し相談してみた。
すると姓は旧姓を名乗ってもいいし今の姓を名乗って新戸籍を作る事も出来ると言われた。
私は今の名前をそのまま名乗りたくない気持ちがあったが色々な名義が山下になっているし子供達は山下の姓に合わせて名付けている。
転校だけでも嫌がっているのに更に名前を変えるとなると益々戸惑わせると思ったので山下のままで新戸籍を作る事にした。
それから、養育費などの事もあるので拓哉と話し合う場を作って下さった。
指定された日に家庭裁判所の相談室でそれぞれ話をした所、拓哉は相談員の人に「妻とはやり直したいと考えている」と言ったらしい。
そして拓哉の話を聞いた相談員さんは笑顔で「いい旦那さんじゃない。もう一度考え直したら」と言ってきた。
私は相談員さんもまんまと拓哉に騙されていると思った。
「口先だけなので私はやり直す気持ちはない」と答えた。
日を変えて再度話し合いの場を作って下さったが拓哉が現れる事は無かった。
強制的に出頭命令を出す事が出来ると言われたが私は断った。
拓哉に養育費を支払うような温情があればこんな事にはなっていないし第一借金だらけの拓哉に養育費を支払う能力がない事は私が一番よく知っていた。
約束を守ってくれるような男でもなかった。
こうして何度も裁判所に足を運ぶのも無駄な時間だと思った。
そんな時、拓哉が無断で会社を休んだ。
事情を知らない皆は妻と思っている私に「店長はどうされたんですか?具合でも悪いんですか?」と確認してきた。
私はもう皆に隠せないと思って離婚した事、もうかなり前から家には帰ってきてない事、家を出て子供達と暮らす予定である事等を涙ながらに報告した。
暫く無断で会社を休んだ拓哉はやがて電話で会社を辞めると言ってきたらしい。
今までは仕事先で拓哉の所在を確認できたがその後何処にいるのか行方が分からなくなった。
きっと由美さんの所だろうと思ったがもう連絡する気もなかった。
部長は私の行く末を案じて今までパートだったが正社員採用と拓哉の退職金を私が受け取るように手配して下さった。
会社の人達も拓哉の仕事ぶりは認めていたが私生活が乱れている事は薄々知っていたようだった。
こうして私は正社員として今まで通り働かせて頂く事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます