第18話 無免許運転
車はないと便利が悪いので安い中古の車を購入した。拓哉は相変わらず帰りが遅く家には只寝に帰るだけだった。しかも家にいることは殆んどなく休みの日がいつなのかも分からなかった。
こうして3年位経った時、飲酒運転など度重なる違反が続きとうとう免許取消になってしまった。次から次へと心が休まる事は無かった。妻の監督不行届と言われればそれまでだが大の大人の行動とは思えなかった。だが拓哉は私の前ではいつも低姿勢で怒りをぶつける私を上手く丸め込んでしまうのだ。本当に言葉巧みでプロの詐欺師だ。まんまと私は引っかかってしまうのだ。
義父は度重なる不祥事に益々腹を立てて一度殴り合いの喧嘩になった事があった。それ以来拓哉は義父と顔を合わせる事を避けるようになった。車がないと交通の不便な田舎だったので再び私の送迎が始まった。拓哉には何とか心を入れ替えて欲しくて協力する事にした。
夫婦で過ごす時間が無かった私にとっては送迎の車の中が唯一2人の時間だった。拓哉のいない間の子供達の様子や出来事等を伝える良い時間となった。そんなある日いつものように「迎えに来てほしい」という連絡がいつまで待ってもないので、「どうしたんだろう」と心配していた早朝、電話が鳴った。出ると思いがけず病院からで「山下拓哉さんのお宅ですか?交通事故に遭われて入院されてます。着替えを持って来て下さい」との知らせだった。命に別状ないとの事だったが取るものもとりあえず指定の病院に駆け付けた。頭や顔は傷だらけで着ていた服は血痕がべっとり付着していたが骨折もなく2週間程度の入院で済んだ。何故事故に?と色々な疑問があったがやがて全貌が明らかになってきた。無免許にも関わらず拓哉が運転していたのだ。免許取消になってから拓哉の車は処分した事になっていたが実際は処分せずに家族に見つからない所で時々乗っていたようだ。しかも会社等には免許取消の事を伏せていたようだ。いつも私が大変な中、送迎していたというのに。信じられない出来事だった。
拓哉は居眠り運転だったのかセンターラインを越えてトラックとぶつかったのだ。明らかに拓哉の過失だった。事故現場を見た警察は相手がトラックだったので死んでもおかしくない程の事故だったと言っていた。相手のトラックの荷物も破損していて損害賠償責任もあった。無免許運転だったので当然保険は下りず全て自己責任で相手の保証をしなければならなかった。
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