第三十四話 原材料キャッサバ
「いらっしゃいませ〜!タピオカいかがですか〜!」
「おいしいですヨ〜」
一年生のフロアに着くと、階段ホールには沢山の張り紙とか出店の看板が並んでいて、チラシを配ってる生徒とかも沢山いる。その中に八重桜さんの姿も発見した。
お店の人が着てるような、少しオレンジっぽい色のエプロンを身に纏って通りかかる人にチラシを渡している。
文化祭してる…!と意味の分からない感動を覚えた俺は、そのまま話しかけるのも気恥ずかしく感じて、取り敢えずチラシだけ貰ってあわよくば気付いてくれーッ、と通り過ぎようとしたら、
「あ、ぱいせん!」
普通に気付いてくれた。チラシを持って、友達と2人でこちらに走ってくる八重桜さん。
「ちわーっす、ぱいせんさん」
「お、おう」
「紹介します。クラスメートの的場みきちゃんです」
「よろしくでーす」
八重桜さんと一緒に走って来たのは、ゆるふわウェーブの茶髪を腰まで伸ばした縁無しの眼鏡をかけた女子生徒。前に八重桜さんと一緒にいた雰囲気イケメンの女子とあんまり変わらないくらいの背の高さがある。
「あとチラシ配っとくからあーし達のクラスのタピオカ案内してあげなヨ」
的場さんは八重桜さんの手に持っていたチラシを持ってまた元いた場所に戻っていった。挨拶だけでもしに来てくれるなんて律儀だな。
「こほん、改めて。ぱいせん、タピオカいかがですか?」
「ぜひ!飲みたいな」
「では案内しますね!」
的場さんに見送られながら、八重桜さんについて行くと、たまに八重桜さんの目が食べ物屋の出店に向いていることを確認した俺は、丁度人が並んでなくて、すぐに買えそうだった小さい鮭おにぎりをこっそり購入。
この小さい鮭おにぎりのチョイスには理由がある。八重桜さんはまだ売り子の時間中なので、ガッツリしたものは勿論NGだ。あとで回るときにゆっくり選べば良いからね!
小さい鮭おにぎりのサイズはひとくちサイズなので、ひとくちで食べれるし、小腹も満たすことが出来るのである。ちなみに小さいので、鮭、梅、明太子の3種類が1個ずつ入って100円という値段だ。
後の理由としては、さっきこっそり的場さんが「こは、朝張り切りすぎて朝ごはん食べるの忘れちゃったみたいなので、ぱいせんさんの手腕で何か奢って上げてくださいナ」と言っていたのもある。
八重桜さんの歩く手が後ろに来たタイミングでしれーっとその手に握らせてみる。
暫く歩いていても、鮭おにぎりの事に一切触れる気配がない八重桜さん。
ん、これもしかして気付いてない?
「もう少しで私のクラスに━━━!?」
案内をしてくれていた八重桜さんは自身の手を見て驚く。何故なら知らないうちにその手には鮭おにぎりが握られていたからだ…!
「い、いつの間に…!?」
気付いていて付き合ってくれてるのかと思っていたのだが、どうやら素でビックリしてるらしい。
目を丸くしてる姿を見てるとドッキリ大成功っていう看板を大きく掲げたい気分になる。
「さっきだね」
「いつですか!?あとそんなに食い意地張ってるように見えましたか!?」
「ほんとにさっきだよ、今日朝食べるの忘れたって聞いたから」
「あ…、ありがとうございます!」
「あと梅と明太子もあるから、クラス戻る前に腹に入れとき」
「喜んで頂きます…!」
八重桜さんはニコニコ顔で小さいおにぎりを口に放り込んでいく。「む…美味しいです」と鮭おにぎりを一つ食べ終わった後に呟くと、残りもペロリと完食。
「ご馳走様でした!これで残りも頑張れます!」
「ん、じゃあ次はっと」
そして目的の一年七組に着いたので、八重桜さんに小銭を手渡す。
「タピオカの一番大きいサイズをお願い」
「畏まりました!ふうか〜!トールサイズひとつ!」
「あいよーっ!」
店の奥の方に八重桜さんが声を飛ばすと、そっちの方から元気な声で返事が帰ってきた。ふうかと呼ばれた子は確か、前に八重桜さんと一緒にいた子だね。
昨日の夜、公園で色んな話をしたときに、楽しそうに友達のことを話してたので覚えてる。
一年七組は、クラスの三分の一をプレハブ小屋みたいなセットにしていて、残りの三分の二をテラスのように机を集めてくつろげる様に作っていた。
小屋の見た目も中々にオシャレで、イマドキの子がセンスを発揮して作った力作なんだろうなーと思う。
いうて一学年しか変わらんやないかい、と思うかもしれないが!意外と一学年の違いってデカいんだぜ?
「お待たせしました!タピオカミルクティーのトールサイズです!」
少しして、八重桜さんがタピオカを持って来てくれた。人生初タピオカ。お味の方は…。
「ん、美味しい!」
「良かったです」
太めのストローでタピオカがズポッと口に吸い込まれるのが中々新鮮。普通にティーも美味しいし。
ちなみにタピオカの原材料はキャッサバというらしい。
トールサイズなのでぼちぼち量が多く、飲み終わる頃にはもう八重桜さんのシフトの時間は終わっていた。
「結構腹がタプタプなった…」
「ぱいせん、売り子終わったので行きましょう!早く!」
手を振りながらこっちに来る八重桜さん。
「ん、んじゃ行こっか!」
「はい!えーっと、まずはたこ焼きです!三年二組!こっからだと、一回校庭に出て向こう側です!」
ワクワクを隠さない様子で目を輝かせながらパンフレットを広げ、早歩きになる八重桜さんを慌てて追いかける。
と、その時。
「キャーーーッ!!」
「「!?」」
今から向かおうとした先、つまり校庭の方から女子生徒の甲高い悲鳴が聞こえた。
時刻は12:00になろうとしていた…。
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