第六話 雲のほそくたなびきたる
遂に梅雨に入り、ここ最近はずっと雨続きになった。夏はもう近い。夏休みになったら登校日以外で篠崎さんをこの目で拝む機会がなくなってしまう。
それも悲しいことなのだが、俺としてはあの一年生と会えないのが少し残念に思えていた。
机に頬杖をつきながら窓の外を眺める。
「これの答えは分かりますか?篠崎さん」
「はい、灌漑農業です」
「正解です」
かんがい農業…?なんだそれ…。
授業中は基本的に無に徹している俺は、時々授業に耳を傾けるとその授業が異国語に聞こえてしまうこの頃。灌漑なんて言葉知らんぞ。
「今日はここまで。号令お願いします」
「はい、きりーつ、礼」
「「「ありがとうございましたー」」」
取り敢えず今日も乗り切り、後はホームルームをして帰るだけ。よし、荷物まとめてベルサッサ。の筈だったのだが。
「ちょっと残って欲しいんだけど」
「…!?」
ホームルームを前にトイレに行こうとした時、俺は篠崎さんに呼び止められた。
一体全体なんだってんだい。これはもしや俺に気がある感じか?放課後誰もいなくなった教室で俺は告白されてしまうのか?初告白がクラス一の美少女からなのか?そうなのだろう、だってこんな俺を呼び止めるなんて他に誰も、他に誰も…?
「ーーー、んじゃまた後でね?」
「お、おう」
篠崎さんは何かを言い残して去って行った。考え事してたから全く聞けてなかった。なんて言ってたんだろう、告白かな?告白だろう。
べ、別に用事とか無いし、早く帰らなくてもいいなー今日は。うん。
そして放課後の教室、俺と篠崎さん。
「な、なに?」
「あのさ」
「あ、あい」
遂に俺もリア充の仲間入りです、あぁ神様。
ありがとうみんな。
でもやっぱり俺の予想は外れていた。
「忘れてたよね?今日の掃除当番」
予想外の一撃に頭の中が一瞬にして真っ白になった。マジやん、掃除当番やん。
なんでこんなビッグイベント忘れてたんや俺。折角放課後、篠崎さんと2人なのに。
確かに、朝のホームルームで、本来なら今日が当番の人が休んでたので、次の番号の俺になってたんやん。完璧に夏休みに意識持っていかれてた。
「い、いや、忘れてないよ!」
「すぐに帰る準備してるように見えたんだけど」
完璧にチャイムなったら速攻で帰ろうとしてたのバレてますやんけ。誤魔化しきれんやんか…。
「た、確かに忘れてました…すいません…」
「まぁ、いいケド。じゃ、床掃いて」
「お、おう」
言われた通り掃除用具箱から、箒を取り出して床を掃く。床には消しゴムの削りかすとかクシャクシャのプリントの切れ端とか色々と落ちてるので、掃除のしがいはある。
家帰ったら、たまには玄関も箒で掃くかなぁ。そんな事を考えながら惰性で床を掃いていると、開けている窓から熱気を孕んだ風が教室内に吹き込んできた。もう夏だね…。
チラッと黒板の方を向くと、篠崎さんは背伸びしながら黒板を消していた。背伸びしてる姿って良いよね。篠崎さんは多分160cmくらいあると思うんだけど、黒板って高いからね。んー、バレーしてることもあって、伸びの姿勢がめっちゃいい。
おっと、あまり見過ぎたらあかん。
篠崎さんから目を離して半ば適当に掃いていく。そして一通り掃除が終わる頃、篠崎さんは学生鞄とスポーツバッグを背負って教室から出ていった。部活してる人間の荷物は多いな。
「ごめん、私部活行かなきゃだから後片付けよろしく」
「おん、」
俺がじゃあねを言う前に去っていく篠崎さん。普通にええ子なんよ…。本当に腹黒なんかいな…?まぁ、所詮は噂だからな。普通はね、帰り際に声かけたりせんのよ。あ、俺にってことね?にしても篠崎さんに嫌われてないっぽくね?ふぅ…。
そういや夏休みまであと1週間か。
「今年の夏も家でゲームだな」
夏休み前の1週間なんてあってないようなもんだしな。あっという間に夏休みよ。今年こそは宿題早めにしようかねぇ。
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