第四話 すこしあかりて

取り敢えず今日も何もなかった。あれから数日、何もない毎日が続いている。

今日は一回も授業で当てられる事がなかったのでいい傾向だ。


「きりーつ、礼」

「「「ありがとうございましたー」」」


帰りのホームルームが終わり、クラスメイトたちは仲良い奴らや部活仲間で集まり雑談しながらクラスを出ていく。


俺は窓際に席があるため、出口からは一番遠い。


なんか窓際がいいなと思って席替えの時に座ったら、誰も何も言わず席が決まった。多分窓際がいいやつもいたんだろうけど、それより俺に話しかける方が嫌だったのだろう。我ながら清々しい嫌われっぷりだ。自分で言っておきながら泣きたい。


「そこ、教室鍵閉めるから早く出なさい」

「分かりました」


先生の催促で俺は教室を後にする。


取り敢えず今日も少し放課後の散歩と行こう。

にしてもこの前の告白劇は結構面白かった。


あれ以来赤坂の篠崎さんへの態度が少し硬くなったのが俺の中ではかなりネタになっている。告白が空振りした後のあの空気感ってなんとも言えないよね。


さて今日こそは帰りに大判焼きを買って帰ろう。

昨日も買うの忘れてそのまま帰っちゃったし。


さて帰るにしても今日はいつも降りる階段とは逆方向から行こう。

なんかね、いつもと違うルートをたまに通ると新しい発見があったり、さ。


そのルートから行くと、下に降りる階段までに一つ死角の多い角を曲がらなければならないのだがまぁ、下校時間過ぎてるし人いないっしょ。


そして何も警戒していないまま、俺が角を曲がると走ってきた何かにぶつかった。


「んっ」

「!?」


なんだこれ、柔らかい…??

そう、ぶつかったものは柔らかいものだった。


突然のことで頭の処理が追いついておらず、何にぶつかったとかよく分かってない。


ボケっとしていると、目の前の柔らかい質感の何かは立ち上がり俺を睨み付け、顔を真っ赤にしながら大きな声を出した。


「っ!どこ見て歩いてるんやの!?」

「ごっ、ごめんなさい!!」


よく見ると、柔らかい正体は人だった。


ってか、よく見ると篠崎さんじゃないか。


…は?篠崎さん…?


「あ、あなたは!同じクラスの!」

「ひっ、ご、ごめんなさい!!!」


あーあ。やりましたね、終わりです。

俺の脳内に黒字で浮かび上がる「BONFIRE LIT」の文字。


「っ…いったぁ…」

「だ、大丈夫ですか!?」


篠崎さんはぶつかったときに膝を擦りむいてしまったみたいで、膝小僧が赤くなっている。幸い擦りむいただけで深い傷にはなってないみたいけど、怪我をさせてしまった。


「歩けますか?」

「う、うん」


篠崎さんと一緒に少し先にある保健室に向かう。まだこの時間なら保健の先生も居るはずだ。


「…」


先頭を歩く俺から少し離れて付いてくる篠崎さんは少し俯いたまま。


「…こっちこそ…廊下走ってごめん…」


何かを呟いたような気がしたが俺には聞こえなかった。


そのまま保健室に入った俺は、中で作業をしていた保健室の先生に事情を説明し、

篠崎さんの処置をお願いした後、下足箱で靴に履き替えて外に出た。


明日学校来たらクラスで話題になってんのかなぁ…、とか考えながら、

自転車をいつも行くショッピングモールとは逆方向に走らせる。

大判焼きの気分じゃなくなっていた俺は少し走って帰ることにした。


少し前に出来た新しい道の駅にでも行ってみようかな。


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