第二話 やうやう白く
「いっちにーさんし!」
「ごーろくしちはち!」
外で運動部が準備体操をしてる声が校舎内まで聞こえてくる。
今日は天気が良いから気持ち良いんだろうな。
さて帰宅部の俺はというと今日もまた廊下を歩きながら時間を潰していた。
頭に浮かぶのは昨日、駐輪場で話しかけて来た生徒会の一年生。
可愛かった。正直篠崎さんレベルのインパクトがあった。
またこうやって散歩してたら会えないかな、と思いつつ歩いていると、
いつのまにか体育館近くに差し掛かっており、中から色んな部活の掛け声が聞こえてきて、ふと体育館のほうに目を向けると窓から部活に励む篠崎さんの姿が見えた。
汗をかきながらバレーボールを打ち返すその姿は女神と呼んでも差し支えはないと思う。何かに一生懸命に打ち込んでる人ってそれだけで魅力的だよな。
やっぱり篠崎さんって素敵だなと思う。
今でも俺はまだ篠崎さんに少し好意を抱いているのだ。
「いいもの見れたし、そろぼち帰るかな」
部活を頑張っている篠崎さんを見ながら考え事をしていた俺は、いつの間にかその姿に見入ってしまっており、背後から来た気配に気づかなかった。
「ぱいせん」
「WHAT!?」
突然の声に思いもよらない声に声にならない声を上げた挙げ句、振り向きざまに腰と膝をやってしまい、そのまま壁にも垂れ込んでしまった。
恐る恐る声の方を見てみると、そこには黒ずくめの男…ではなく、昨日駐輪場で声をかけてきた生徒会の一年生が立っていた。会いたいとは思ってたけどこのタイミングじゃないだろ...!?
「こんな所で何をしてるんですか?」
「ふぇ、あ、あの、その、エッ、アッ」
突然の質問に思わずどもってしまう。
その反応が悪かったのか何か勘違いさせてしまったらしく、
「取り敢えず生活指導の先生に覗きがいましたと報告しておきます」
「ちょ、ちがっ」
「なにが違うんですか?」
微笑みながら手に持っていたバインダーに何かを書き込んでいく一年生。
え、何この子怖い…!なんかすごい圧を感じるんだけど!
ってか覗きとかじゃないのになんかうまく反論できる気がしない!
冤罪です
これは人生終わったかもしれない。
というか学校生活は確実に終わる。
起死回生の弁明を考えろ俺!頼むぜ、俺の第六感!
「お、俺はバレーに興味があって」
「で、わざわざ女バレを見てたんですか?」
何言ってんだ俺の第六感んんん!
バレーとかルールも分かんないんだけど!?
しかもそれだけじゃ女バレを見てた理由にはなってないだろうが!
「…そうだよ!女バレってなんかいいだろ!」
「何がいいのか分かりませんが私はこれで」
「ちょ、おい!アッ!」
そのまま突き進んだ俺の第六感はデカ目の墓穴を掘って退場していった。
何やってんだ俺の第六感!ちょっと!ほんとに何やっちゃってくれてんの!?
立ち去っていく一年生。そしてちょっと大声を出したのが聞こえたのか寄ってくる女バレ部員たち。そのまま部活しててよぉ!?
ここで篠崎さんに見つかったら終わるじゃんね…!?
絶体絶命の俺は、体育館裏口に置いてあったとび箱の中に飛び込み、蓋を閉めた。
「なんか今言い合いみたいな声聞こえたよね?」
「誰もいないじゃん、練習戻ろ?」
「はーい」
意外と近めの距離から声が聞こえる。いや、危機一髪すぎるだろ。
一応声が離れて2〜3分してから外に出た。
ふぅ…。どうにかバレずに済んだぜ…。
生きた心地がしなかった…。大人しく今日は帰ろう。
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