三十二日目
身体の痛みで目が覚めた。まだ深夜のようだ。
「……ってぇ……誰だよ殺すぞボケナス」
「俺だよリクだよ……ってフザケてる場合じゃねえよ! ロンがエテルニテを傷付けたんだ! 今めっちゃ大変な事になってる!」
あたまがまっしろになった。
場所は変わって数時間前に居たエテルニテの寝室。あの後、リクはライムさんとロンが連れて行かれたという集会場の方へ向かい、俺だけここに来ている状態だ。真っ白だった毛布は真っ青に染まり、エテルニテの身体は見てられない程に傷だらけであった……まるで、野犬にでも襲われたような、爪の傷である。エテルニテはなんとか息を繋いでいる状態にあるようで、ローイが付きっ切りで見ている。
「……あの獣のガキだったら、集会場の方へ連れて行かれましたよ。今頃、処刑されてるんじゃないですか」
ローイの視線は冷たく、俺達を侮蔑しているような顔だ。エテルニテの小さな手を両手で握っている。
「へぇ。まぁ、そうだろうな。短命な薔薇族の中で、美しさを少しも失わず五年も生きている薔薇族の長……まぁ、一種の神のような存在が殺されたら、そうなるわな」
「なんだ。意外と仲間意識は無いんですね」
「ロンが犯人っていうのがそもそもおかしいからな。信じる信じないの問題じゃねえだろ」
ローイの肩が少し動いた。動揺しているのだろうか。
「第一発見者は俺ですよ。あの子供がエテルニテ様に跨って切り刻んでるのを止めたんですから」
ローイがロンに付けられた、と言う生々しい切り傷を見せてきた。確かに、エテルニテに付いている切り傷と良く似ている。
「へぇ~? そりゃあ凄い。自傷行為までするなんて、本格的ですねぇ」
まぁこれは完全に口からでまかせな訳だが、ローイの眉が一瞬動いた事で、疑問が確信に変わった。
「……ローイ、もう、いいわ……全部、話しましょう」
ローイが口を開き掛けたのを止めるように、庇うように、エテルニテは苦しそうな声を漏らしながらも必死に声を発しているようだ。
「……エテルニテ様の望むままに」
エテルニテから手を離し、壊れ物を扱うようにエテルニテの上半身を起こすと、ローイは静かにベッドの横へ戻った。
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