面子[前編]



私の住んでいる場所は、




自然が豊かで、いわゆる、




田舎と呼ばれるモノだった。




けれども、別に田舎だなんて




これっぽっちも思わなかった。




緑が綺麗で、四季も鮮やかだ。




私はこの場所が大好きだった。






家には大きな蔵があった。




そこには物心つく頃から




絶対に入ってはいけないと。




何度も釘を刺されていた。






本当は気になっていたが、




言われていた為、入らなかった。






ある日の事。




たまたま皆が留守にした。




こんな機会は滅多に無く、




いつもなら誰かが必ず家に居た。




それはもしかすると、




"ナニカ"から私を護る為




だったのかもしれない。






私はドキドキしながら、




蔵の大きな扉の前に立つ。




正面は鍵が掛かっていた。




そんな事は分かっていた。




常に何処からなら入れるかを、




毎日考えて居たのだから、






蔵の二階らしき窓は開いている。




換気の為か。爺ちゃんが毎朝開ける。






家の二階から屋根づたいに、




渡る事が可能だった。




子供は恐れ知らずだ。






蔵の窓には網戸が張ってあった為、




物干し竿で網戸を押し、外す。




網戸は中に音を立てて落ち、




入れる様になった。




靴を履き、屋根に上がる。




落ちたら怪我だけでは済まないだろう。




だが、それも楽しい。




ワクワクとドキドキを抱え、




2階から侵入する。




中は明かり等無く、本当の暗闇。




懐中電灯を付けなければ、




自分が何処を向いているのか




分からなくなる程だった。






まずは一階へと向かう。




中はいろいろな物が置いてあり、




子供心を擽った。




壺や皿。巻物や、置物。




手当たり次第に触った。






何が




"イケナイモノ"




かは、知らずに。






一階は小物の為、何でも開けられた。




綺麗に整頓されており、




棚の上の方の物には手が届かなかった。




箱に入っている物は見ても




何だか分からない物が多かった。






2階は大きめの物が置いてあった。




箱自体が重く、蓋すら開けられない。




唯一開けられた箱の中には




お面の様な物が入っていた。




特に面白い物等無く、




そろそろ帰ろうとした時




ふと視線を足元に向けると、




網戸に貼ってあっただろう御札が、




地面に落ちていた。




私は何だか怖くなって、




自分がしてしまった事を後悔する。






その夜。原因不明の高熱を出す。




「ニクイ、ニクイ」




「クッテシマオウ」




「アァアァアアア」




「ダセ、ダセ、、」




「クライヨォ、」




真っ暗の中で、無数の声が響く。




身体は押さえ付けられているかの様に重く、




身体が沸騰しているかの様に熱い。




うぅう、、苦しいよぉ、、




「シンデシマエ、、」




「ノロイダ、、」




「ノロイ。」




「ムネンヲ、、ハラス」




助けて、、、






『タスケテヤロウカ?』






その瞬間、うっとうしい無数の声は




散るようにして、聴こえなくなった。




、、誰?




『ダレデモネエサ、、』




一瞬にして、身体は凍る様にして冷たくなり、




感覚すらも分からなくなる。




寒い、、




『デ。ドウスルヨ?』




寒いよぉ、、




『ッタク、、




アツイッツタリ、サムイッツタリ、、




ナンダッタラインダ。』




「ソノクライニシナイト、




コドモハシンデシマウゾ、、」




また新しい声。




年老いていて、掠れるような。




『チッ、




マア、ショウガネエナ、、』




私の意識が遠退く。






「、、そんな感じで、、




目が覚めた時にはこれで、




それからずっと離れなくて。」




そう言う男性は藍色の様な夜叉の面を指す。






私の家は基本的に招かなければ入れない。




敷地内には無数の結界があり、




そもそも普通の人すら入ってこれないのだ。




ましてやこんな山奥に、、




それにいつもは姉さん達が居るから




尚更なんだけど、、




今日たまたまは姉さん達が外出しに




行っているからだろうか、、




それにしてもだ、、




、、、、、。




まあ"彼女"が反応しないって事は、




大丈夫って事だな。






始まりは、




特にする事が無く、ゆっくりしていていたら




「すいませ~ん」




と、不意に彼が訪ねて来たのである。




今日は何もないハズなんだけどなあ、、




と思いながらも今に至る。






男性「それで~、、




これは外れるかい??」




何だか当たり前の様に話が進む。




「あのぉ、、大変申し訳ないのですが、、」




話の腰を折る様にして男性は話す。




「他の"自称さん"達の所にも




行ったのですがね、、」




人の話を聞かずに、私を自称呼ばわりするとは、、




くっ、、、




頭にきてしまった私はバカだった。




基本的に私はまだまだ未熟な身。




何かあってからでは適切な対処が出来ない為、




姉さん達に守られながらやって貰っていると




言った感じなのだが、、






まさかああなるとは、、






「いいでしょう。




不本意ではありますが、




貴方がそうおっしゃるのであれば。」




男性「やったあ、、




じゃあ、お願いします。




あっ。




一つだけ、、






"私のは手強いですよ?"









いちいち鼻につく、、




「えーっと、私は煙草を扱うのですが




大丈夫ですか?」




男性「御好きな様に、、」




































































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