アニメ化するならキャラを立てなきゃね!

第7話 アニメ化するならキャラを立てなきゃね

「アニメ化するなら、キャラを立てなきゃ!」



 レゴが、腕を組んでふんぞり返っているのを見て、エマは、おーっとかわいい声をあげ、ぱちぱちと手を打った。



「立てなきゃ!」


「立てるぞ!」


「「おー!」」



 ふわふわの髪を揺らしつつ、エマは、腕をつきあげ、無駄むだに大きい胸を揺らした。



「で、何がアニメ化するの?」


「私達だよ、エマちゃん!」


「え? エマたちがアニメ化するの? ドラマ化じゃなくて?」


「ドラマ化? かーっ、ぺっ! ドラマ化なんてするわけねぇだろ! ぼけてんのか!」


「えー、今、何でエマ怒られたの?」


「ドラマ化するってことはな、女優が私達のわりをえんじるってことでしょ」


「そうだよ。ドラマってそういうものだもの」


「それが問題なんだよ!」


「どこが?」


「絶対に私達よりかわいいじゃん!」


「……うん」


「女優はかわいいから女優なんだよ。もう、絶対に私達よりもかわいい。そうしたらさ、ぷふ、実物じつぶつこんなにかわいくないし、り過ぎじゃない? って言われるじゃん!」


「誰に?」


「知っているよ、世の中、平等じゃないって。産まれながらの基本スペックの違いなんて、みんな知ってますよ。だから、みんな、比較されないように細心さいしんの注意をはらっているの。なのに、私を女優が演じたら、単純に比較されるじゃん! そんな残酷ざんこく仕打しうち、神が許しても私が許さないわ!」


「だ、大丈夫だよ。レゴちゃん、かわいいし」


「ふん、女子高生の言う、おはよう感覚の”かわいい”なんて一ミリも信用できないね」


「ひどーい」


「じゃ、広瀬〇ズと比べても私はかわいいって言える?」


「かわいいは、比べるものじゃないよ。カテゴリーなんだよ。広瀬〇ズちゃんも、パンダも、クリオネも、みんなかわいい仲間」


「その3つが同じカテゴリーに入っている時点で信用できんわ。もはや何が入っていないのかが気になるレベルだし」


「うーん、コモドオオトカゲとか」


「うん。知らない」


オオトカゲだったらかわいかったんだけど」


「うん、わかんない、その違い」


オオトカゲだったら、電波出そうだよね」


「いや、どっちかというとどこもかしこもオオトカゲみたいな、パニック映画の印象が強いかも」


「え? 何それ、怖い!」


「どうでもいいよ! というか、私とコモドオオトカゲを比べるんじゃないよ! さすがにコモドオオトカゲよりはかわいいよ! コモドオオトカゲがどんなのか知らないけど!」


「いや、比べてないけど」


「とにかく、女優が演じるのは無し。コモドオオトカゲが演じるのもなしだから」


「コモドオオトカゲが演じるってのは、意味がわからないけど。あれ? じゃ、何でアニメ化はいいの?」


「アニメ化は、デフォルメだから」


「デフォルメ?」


「そう。特徴的なところ強調すること。たとえば、私だったら、眼が大きくてきれいでしょ。そしたら、目が大きいっていうところを強調するの」


「なるほど」


「逆に、そばかすとかほくろとか天パは私の特徴じゃないから、ぎ落してもいいの。もしもアニメ化したときに、背が高くてグラマラスボディでピンク髪の超絶美人になっていたとしても、それは眼が大きいという特徴でデフォルメされた結果だから、私であることには変わりないということよ!」


「す、すごいね、デフォルメって」


「そうなのだ」


「デフォルメした後の姿は明らかに別人なのに、同一人物だって言い張れるんだね」


「おい」


「なら、私はエマ・ス〇ーンみたいな見た目にデフォルメしてほしい。ほら、眼が二つあるし、名前一緒だから、いけるんじゃないかな?」


「いけねぇよ! エマ・スト〇ンみたいな見た目だったら、それはエマ・スト〇ンでしょ! 見た瞬間に、誰をデフォルメしたかわからないとだめなの!」


「じゃ、レゴのデフォルメが、”背が高くてグラマラスボディでピンク髪の超絶美人”っていうのも無理じゃない?」


「あ?」


「え?」


「よし、喧嘩だな」


「待って待って。エマ、これで怒られるのは納得いかない」


「うー! ちょっとくらい盛ったっていいだろ!」


「ちょっとくらい盛ってもいいなら、ドラマ化して女優が演じてもいいんじゃないの?」


「ん? なるほど。よし、許可しよう。ちなみにドラマ化するなら、私はマー〇ット・ロビーがいい」


「あ、面影おもかげあるー」


「え? ほんと? えへへ。エマも、エ〇・ストーンと共通点あると思うよ、わりと。ほら、口元とか」


「え、うれしい! じゃ、エマ達、ハリウッドからスカウト来ちゃうかも」


「スカウトされちゃうかもね!」


「「どうしよー!」」



 レゴとエマが、きゃーっと声を揃えたところで、やっと、といったタイミングでシャーペンをノックし、ホリーは顔をあげた。



「おまえら、勉強しろ」





ーーーーー


〇注意事項


この物語は、現実に似ている別時空のお話です。たとえ、実在の人物、団体、会社、製品名などの名前が出てきても、それらは現実に存在する同一名のものとまったく関係ありません。他人の空似そらにです。ねぇ、キ〇ン、何でこんなこと言わなきゃいけないの? こんなの当たり前じゃない。え? もう一回? この物語は――

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