第17話 娘は柱に張り付けにされて弓矢の攻撃で針鼠のようになりました

本日2話目です。あともう一話更新します

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マーマ王国軍第一師団司令官は皇太子ブラッドフォード・マーマが担っていた。

中肉中背であるが、剣技では王国内で5本の指に入る猛将だ。今までの戦いで引くことを知らず、平和主義の前国王のもとではあまり役に立たなかったが、軍の力を背景に侵略を狙う父王に代わってからは面目躍進していた。


強大なマーマ王国の軍事力をもってして侵略を行うべく、北方の小国ダレルに対して皇太子を人質に出せと脅したところ、下手な正義感があるダレル王国は期待通り反発してくれた。

軍を出す口実を得た、マーマ王国軍は脳筋皇太子を筆頭に全軍の半分の1万人の軍を起こしていた。


対するダレルは2千人も兵士を出せれば良いほうだろう。


一撃でダレル王国軍を潰走させる勝算はブラッドフォードには十二分にあった。大魔導師のジャルカが健在ならば多少は手こずったかもしれないが、ジャルカも最近では顔を出さないと言う。残りの魔導師共ではマーマ王国軍の敵ではないだろう。鎧袖一触、一気に王都を陥れる算段をしていた。彼の目の前に障害は何も映らなかった。



「殿下。前方の森の中に女がはりつけにされております」

斥候が帰ってきて復命した。

「女が張り付けにされておると。生贄か何かか」

ブラッドフォードはよく判らなかった。女が張り付けにされているなど、魔女裁判でもあるまいし、マーマ王国の関係者だろうか。


「我らの軍に対する生贄か何かでしょうか」

副官が言う。

「それよりは我軍のスパイが見つかって張り付けにされているのではないのか。一軍を派遣して直ちに救出せよ」

ブラッドフォードは部下に命じていた。



クローディアは森に連れて来られると、いきなり大木に手を縫い付けられた。

「ギャーーーー」

あまりの痛さにクローディアは悲鳴を上げた。


こんな仕打ちを受けるなんて最悪だった。


手からはとめどもなく血が流れ落ち腹からも血が流れていた。

出血で既に意識が朦朧としていた。


何故こんな悲惨な目に合わされなければいけないのか。もうクローディアの目からはとめどもなく涙が溢れていた。

こんなに苦しい目に合うなら早く死んで母のところに行きたかった。


そのクローディアの目の前に、マーマ王国軍の一隊が近付いた。


100名くらいの中隊レベルだ。



「いかが致しますか」

それを影から見ていた魔導師の一人が聞いた。


「100名ばかしを道連れにしても仕方がなかろう。弓矢で攻撃せよ」

「生贄に当たる可能性もありますが」

「そう簡単には爆発しまい。構わん。攻撃せよ」

ニヒルな笑いをしてバーナードは命じていた。

もともとバーナードは魔導師としては将来を嘱望されていた。ジャルカの次を継ぐのはバーナードだと言われていた。しかし、シャラが現れて、ジャルカの弟子として抜擢されてバーナードの夢は潰えた。シャラが生贄になった時はバーナードは諸手を挙げて喜んだ。


もっとも魔導爆弾など魔力の大きいシャラには不要だった。

今回、その娘で初めて魔導爆弾の効果が試せるのだ。生贄など殺しても何も問題なかった。寧ろバーナードを馬鹿にしたシャラ(シャラは全く相手にしていなかっただけだが)の娘を傷つけて暗い喜びにふけっていた。



シャラを見に来た中隊は弓矢を射られてバタバタ倒れた。

「おのれ、罠だ。反撃しろ」

ブラッフォードが叫んでいた。

マーマ王国の大軍が弓矢を射出した。


朦朧とする意識の中で何本もの矢がクローデイアの身体に突き刺さった。

ゆるい障壁で多少守られていたので、クローディアは死ななかっただけだった。

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