11 arrest

antagonist:


 私たちは手錠をつけられ、護送車のなかに入れられ、運ばれていく。そこには数人の警官と、そして栗原がいる。窓はなく、どこに向かっているかも、全くわからない。

 私は訊ねた。

陽子「これがあんたの、やり直し?」

 彼は頷く。

栗原「そうだ、陽子」

 財前が栗原に言った。

財前「ずいぶん準備がよかったな。もしかして、お前は敵とではなく、いまはいないはずの彼と組んでいた側なのか?」

栗原「まあな。もう連合国軍最高司令官総司令部GHQの手のひらの上なんて、ごめんだったんだ」

 そこで杉原が訊ねる。

杉原「あなたたち、何をしようとしているの」

栗原「今までと変わりはない。悪いことをしようとしてる教え子を捕まえる。それだけだよ」

 杉原は首を傾げる。

杉原「もう誰が悪いことをしてるか、めっちゃくちゃじゃないの?」

 彼は笑う。

栗原「その通りだ。だからこそ、俺たちは目指す先にたどり着くためのあらゆる条件をクリアしていく」

 杉原が呆然とするなかで、山崎は訊ねた。

山崎「お前たちは、建築家アーキテクトは、何を目指している」

栗原「奴と俺は、自分たち連合国軍最高司令官総司令部GHQという先生たちの引き起こしてきたすべての問題を、この世界に仕組まれた暗号コードを、解こうとしている」

 財前が言った。

財前「あいつが、連合国軍最高司令官総司令部GHQをつぶすのか」

 栗原は頷いた。私は自嘲気味に言う。

陽子「私は結局、先生だったはずのあんたに何も渡さなかった。その罰がこれなの?」

 彼は首を振った。

栗原「友達思いなのは、いいことだ。お前がそれだけ、未冷を、ここにいる俺のかつての同僚達を、信じてくれていたんだ。だからこそ、こうするべきだと判断した」

 私は鼻で笑う。

陽子「結局私たち教え子は、あんたたちにすらも勝てなかったってわけか」

 先生である彼はそこで言った。

栗原「これは、勝ち負けの問題じゃないんだ」

 私は訊ねる。

陽子「ねえ、あんたのいうやり直しって、結局なんなの……」

 彼は答える。

栗原「この星の仕組みだよ」

 その時、車が止まる。そして私たちは外へと出る。そこは、私の想像する場所とは全く違かった。

陽子「ここ、警察署なの?」

 最後に降りてきた栗原が答える。

栗原「いいや、違う。あれを見ろ」

 そうして指さすその空から、轟音が響いてくる。それは、旅客機だった。そして私は周囲を見渡す。管制塔。巨大な滑走路。そして格納庫。

陽子「ここは……」

栗原「羽田空港、国際線ターミナルだ」

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