16 campaign
protagonist:
バスがやってきて、僕たちは乗り込む。衛理は訊ねてくる。
衛理「敵の動向は」
iPhoneを取り出し、ブラウザで確認する。それは古き暗号通貨達の価格だった。
主人公「予定通り、各取引所のアンティークコインの価格の上昇は止まって横ばいみたいだ」
衛理「つまり連中の暗号通貨の購入はすべて完了していると」
僕は頷く。
駅の改札の前で、スターバックスの紙カップを抱え、なにかの楽器のケースを抱えている真依先輩がいた。彼女が僕たちに気づき、歩いてくる。
真依先輩「いよいよってところかな」
僕は頷き、僕はおどけて訊ねる。
主人公「先輩は楽器、引くのかな」
真依先輩は肩をすくめる。
真依先輩「昔はね。いまは中身が違うけど」
僕たちは駅の改札を通り、電車に乗り込んでいく。
僕たちは平日の昼間の京葉線の電車に乗っていく。そして、僕は自分のバックからMacbook Proを取り出す。衛理が訊ねてくる。
衛理「やるのね」
主人公「ああ、東京駅に着く前にすべて片付ける」
僕が端末を開いてテザリングを開始したとき、真依先輩が訊ねてくる。
真依先輩「何かする気みたいだけど、あの発煙機、どうやって解析したの」
僕は笑う。
主人公「解析なんてできるわけないさ。ネットワークと繋がってるかどうかも保証できていない」
真依先輩「じゃあ何するの……Slack?」
主人公「キャンペーン活動だよ。現代の作戦は、情報戦が第一なのさ」
僕は即座にイガグリのアイコンの相手へと連絡する。
主人公『Goサインを出してくれ』
相手からアイコンのすぐに返答が来る。
栗原『まかせとけ』
そしてすぐにパソコンを閉じてしまっていく。衛理が訊ねてくる。
衛理「も、もう終わり?」
主人公「丹念な下調べは済んでるんだ。あと少ししたらきっとわかるよ」
衛理「さっきのスマホでよくない?」
主人公「実はこのへんの情報流通はリモートでマシンを操作してやってたんだ。結構デリケートな情報だったからね。まだそういう作業はパソコンじゃないとめんどくさいんだ」
そう言いながら、僕はiPhoneを開く。
主人公「お、思ったより早い展開だ」
衛理と真依先輩が僕の端末を覗き込んでくる。そこには、複数の記事がSNS上で載っている。
『複数の大企業、暗号通貨価格操作のために結託して地下鉄テロを画策した疑い』
真依先輩がつぶやく。
真依先輩「そうか、テロを計画した時点で犯罪として要件が成立する……」
衛理は笑う。
衛理「やるじゃん」
僕はありがとう、と返し、
主人公「あとは、この電車が東京駅に着く前に止まらないことを願うばかりだね。犯行予定は今日だったわけだから」
僕の願いは無事に届いたのか、東京駅に着いたその瞬間にテロに関するアナウンスが流れ始め、電車は運転を見合わせはじめていた。
衛理「あぶないあぶない」
衛理はそう安堵する。僕らはエスカレーターで上がっていき、丸の内改札口を出たところで特殊部隊用のものか、真っ黒な戦闘服と防弾チョッキを着ている栗原が待っていた。彼の服にはPOLICEの印刷もされている。僕は彼に言っていた。
主人公「思ってた以上に展開が早くてタクシー呼ぶか考えてましたよ」
栗原「まあ許してくれ、あいつらも朝刊やテレビにすぐにでものせたがっていたんだ」
主人公「それはそうでしたね」
彼の抱えるサブマシンガンを見て、衛理は訊ねていた。
衛理「警察に戻ったんですか」
栗原「お前らに焚きつけられてな。で、強制捜査の準備も完了してる、いくぞ」
僕は首を傾げる。
主人公「そういえばこのあとの予定聞いてませんでした」
真依先輩が呆れて、
真依先輩「朝ちゃんと話したでしょ、後輩くん……」
それを思い出したものの、僕は訊ねていた。
主人公「実行犯のビルに行くのは、ここから車でですか?」
栗原「それもあるし、計画犯のバカ企業どもについてはヘリコプターからのやつらもいる」
だが、と栗原さんは言葉を切り、
栗原「お前らは日比谷駅から、大好きな地下秘密路線だ」
日比谷駅に降りた先には、すでに電車が完全に封鎖されており、多くの人が立ち往生している。その改札の先では、警察の人たちがフェイスマスクを装備して並んでいて、僕らが栗原さんとともに人垣や改札を越えてやってくると驚いたように僕らに振り返ってくる。だがその顔の違いは、マスクのせいでほとんどわからない。フェイスマスクをつけていない栗原さんが周囲に告げる。
栗原「気にするな、俺の捜査協力者だ」
そして、無線を、と周囲の警察の人に栗原さんが告げると、僕らは無線装置を手渡される。フェイスマスクをつけていく栗原さんが訊ねてくる。
栗原「無線の操作のしかたはわかるな?」
衛理と真依先輩が頷くなか、僕は怯えるように、
主人公「ぼ、僕はじめてで……」
栗原さんはヘルメットを被り、こともなげに言った。
栗原「連絡する時はお前の先輩たちか俺たちを頼れ、普通に聞いていればいい」
僕は頷きながらイヤホンをつけていく。そして僕らが先頭に立つと、栗原さんはサブマシンガンであるMP5の状態をチェックしながら言った。
栗原「あの犯罪組織の連中がもしも厄介なタイプなら、最後の逃げ口はこのルートだけだ」
衛理がラケットバックからP90を取り出しながら言った。
衛理「電車も完全に止めたから、本気で捜査もできるってわけですね」
栗原さんも頷き、
栗原「あんな映像が流れちまえばな」
真依先輩は楽器のケースからM4カービンを取り出しながらぼやく。
真依先輩「国の安全保障は、こういう時は悪人に手厳しいですね」
栗原「大きな時はな。そのためにおまわりさんだけじゃなくて、俺たちも存在しているのさ。それで、暗号通貨の状況は」
僕はスマホを出して結果を確認して答える。
主人公「価格は半額まで暴落しています。借金しまくっていた彼らの口座がマイナスに向かうには十分以上です」
栗原さんは満足げに言った。
栗原「
僕は頷く。そして栗原さんは周囲に告げる。
栗原「これより突入作戦を開始する。行け!」
斥候の人たちが前を走り始め、僕らも走ってついていく。階段を駆け降り、電車のホームへと到達すると、そこでの電光掲示板はすべて運転見合わせと表示されている。斥候の人たちが線路へ飛び降り、その先へと走っていく。僕も追随するように飛び降りながら言っていた。
主人公「ほ、ほんとにこんなところを走るの……」
飛び降りてきた栗原さんは笑いかけてくる。
栗原「人生で一度きりだぜ、楽しめよ」
そう言って走っていくのを僕は見て、一緒に走り始めた。
この道の先にあるはずの、終わりを目指して。
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