第29話 本の中と現実

「俺が普段本をよく読んでいるのは知ってるよな?」

「もちろん! 空のことで知らないことなんてほとんどないよ!」


 おう……それはそれで怖いな。

 ストーカーか?


 まぁ今回それは置いとこう。


「あくまで俺の読んでる本で起きてた事件なんだが、もしかしたらそれかもしれない」

「どんな事件なの?」


 悠亜の顔は事件と聞いて少し真剣な顔をしていた。


「その事件というのはストーカー脅迫事件」

「あくまで本の中の話だからな。実際起きているかは知らない」


 そう前置きをしつつ俺はその本で起きてた事件を悠亜に説明した。


「ここら辺じゃ美少女と言われる女の子がいました。明るくて優しそうでとってもいい子です。そんな彼女をある人達は自分のもの、女にしたいと考えます。そしてその人達は彼女の家、通学路、友人関係などを探るためストーカーをします。何かを感じたのか。女の子は誰かに見られてると気づき、家に引きこもりました。そして女の子が家から出てこなくなった数日後、女の子の家に脅迫状が届きます。内容は『○○。お前を俺のものにしたい。だから付き合え。断るならお前の家族、友人、知り合いになにかあっても知らないぞ』と」


 そこまで話すと悠亜は1つ聞いてきた。


「そんなの送られてきたら警察に通報すればいいじゃん」


 その通りだ。

 

「出来なかったんだ。まだ内容には続きがあってこう書いてあった。『警察に通報すれば家族、友人、知り合いの命になにかあっても知らないぞ』と」


 悠亜は少し顔を青くした。

 多分悠亜はこう思っているんだろう。

 もしもこれが本当に起きているなら。

 春の身に降り掛かっているとしたら。

 俺もそう考えたさ。

 だから今こうして話してる。


「とりあえず春の家に入れてもらおう」

「ど、どうやって?」

「ドアを叩くんだよ。電話もしよう」


 なんでもいい。

 俺が春の力になるためにはまず話さないといけない。

 だから!


「開けてくれ!」


 俺はそう叫んだ。

 1人の友人を案じて。

 もしかしたら起きているかもしれない事件を解決するために。


 そしてドアが開いた。

 出てきたのは髪のぼさっとした春だった。

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