第288話 vs狂気のタンク職たち

「あれ……ユウジンじゃん。こんなとこでどうした?」


 ノインが声を掛けると、彼は砂の山から降りてくる。


「俺……変な意地を張ってたみたいなんだ」

「……?」


 突然語り始めるユウジンに首を捻る。


「お前が認められなくて、お前の力は間違ってるって……」


 ――あれ? なんか……おかしくない?


 先程のRui子から聞いた話だと、ユウジンは急用ができたはず。こんな何もない場所に来るわけがない。


「でも、そうじゃなかった。認めるよ、今のお前の力はトップランカーと同格だって」

「えっと……ありがとう?」


 ユウジンが右手を差し出す。

 それにつられ、ノインも握手しようと手を出した。


「ノインさん、ストッ――!」


 なにか嫌な予感がしたユキが慌てて止めようとするが――もう遅い。


 彼はニヤリと笑みを浮かべると、彼の手をガッチリ掴んだ。


「――だが、俺の方が強い!」

『【X】!』

「……おっ?」


 懐から取り出したのは……スキルメモリー。


「【天狗】!」

「チィッ……!」


 すかさず間に入ったユキが風圧でユウジンを吹き飛ばすものの……既にメモリは起動されてしまった。


「ノイン――いや、マケルぅ! お前の力……使わせてもらうぜぇ!」


 ユウジンの装備に光が纏っていき――やがて形成されたのは、ノインと瓜二つの銀甲冑。


【名前:ユウジン

メイン:ディフェンサー Lv.82

 サブ:バーサーカー Lv.81

 HP:1633/1633

 MP:246/246

 攻撃:6021

 防御:1468

 魔功:82

 魔防:1225

素早さ:4188

スキル

【シールドスラッシュ Lv.8】【バーサーク Lv.8】【ブラスト Lv.9】【プレス Lv.9】【タウント Lv.7】【アクセル Lv.8】【メテオ Lv.8】【オーバーヒート Lv.5】

】


「お前の防具も! 武器も! 全部コピーさせてもらった!!」

「――!!」


 ノインと同じステータス、ノインと同じ装備。

 普通ではあり得ないような状況に全員が警戒態勢を取る。


 だが、これだけではない。


「そして、このステータスは――」


 ユウジンが手を挙げると同時に現れたのは、見覚えのあるプレイヤーたち。

 『レッドクラス』、『ブルーブースター』、『グリーンパック』……どれもノルズにこっぴどくやられたプレイヤーばかりが窪地のノルズを四方に囲んでいる。


「他人にコピーできる!」


 指を鳴らすと、たちまち周囲のプレイヤーたちが光を纏い……ノインと同じ装備になっていった。


「これでお前と同じステータスのプレイヤーが三十人対一人じゃあ、どっちの方が強いのか……算数を知ってればわかるよなぁ?」

「ま、まずい……!」


 下卑た笑みを浮かべるユウジンに、ヒメが冷や汗をかく。


「相手がノインくんと同じステータスだなんて……どう倒せば……!」


 ノインはノルズ最強のプレイヤー。そんなステータスを持ち合わせたプレイヤーが三十人もいれば……普通に考えて、ユキたちに勝ち目はない。


「はっ……はははははっ! こんなに……こんなに簡単なことだったんだ……! お前を越えることなんて、こんなにも簡単なことだったんだなぁ!!」


 完全に勝った気になったユウジンは周囲を煽ぐ。


「お前ら! ノルズにされた仕返し……存分にしてやれ!」

「こ、これで……俺も最強の力を……!」

「へっへっへ……覚悟しろよ、ノルズ……!」

「「「【バーサーク・3rdモード】!!」」」


 取り囲むプレイヤーたちが次々と赤いオーラと稲妻を纏っていく。

 こちらに非がないとはいえ、ノルズに恨みを持っているプレイヤーたち。攻撃するのに躊躇う理由などあるだろうか。


「え、や、やばっ……!」

「ど、どうしようっ!? この数に勝てるわけが……!」

「……ノ、ノインさん!」


 絶体絶命のピンチにユキが振り向くと……肝心のノインは楽しそうに笑っていた。


「いいね。面白そうだ」

「お……面白がってる場合ですかぁっ! 相手はノインさんと同じステータスを持って――!」


 と、そこまで叫んだ時――ハッとなにかに気がつく。


「ノインさんと……同じ……」


 もし本当にノインと同じステータス、同じ能力ならば……弱点がある。


「……すみません。ノインさんの出番、あんまりないかもです」

「えっ」

「「「えっ?」」」


 ユキの発言に、ノインのみならず全員が驚いた表情を見せた。


 ――この中で一番わかりやすく伝えられるのは……。


「さぁヒメさん、先陣切りますよ!」

「…………。……ん? えっ……わ、私!? Rui子くんや龍矢くんじゃなく、私がやるのかいっ!!?」

「ええ、その通りです!」


 まさか指名されるとは思わず、ヒメが狼狽える。


「無理無理無理っ! 無理だって! 私のスキル、攻撃には向いてないんだよ!?」

「大丈夫ですよヒメさん、なんの問題もありません」


 だが、ユキには自信があった。

 全力で拒否しようとするヒメを宥め、バーサークモードを発動したプレイヤーたちを指差す。


「あそこに風魔法撃つだけです」

「か、風魔法!? 火でも氷でもなく!? なんで攻撃力が低い属性を!!?」

「いいから早く! はい、ウインドスラッシュ!」

「う、うぅ――【ウインドスラッシュ】!!」


 もはや投げやりだった。

 ユキに促されたヒメがロッドを振り、見えない風の刃が真っ直ぐ飛んでい

く。

 相手は……小馬鹿にしたように鼻を鳴らすだけ。

 それもそのはず。風魔法の攻撃力など取るに足らないのだから。


 ――やっぱり、こんな攻撃じゃ……!


 シンプルすぎるヒメの魔法に数人が盾を構え――





『1』

『You Died』

『1』

『You Died』

『1』

『You Died』

『1』

『You Died』

『1』

『You Died』

『1』

『You Died』

『1』

『You Died』

『1』

『You Died』




 直撃したプレイヤーたちは一人残らず散っていった。


「「「えっ」」」

「えっ?」

「………………えっ??」


 周囲は目が点になる。ノインも目が点になる。放ったヒメさえもなにが起こったのかわからない顔をする。


 プレイヤー八人同時キルという、とんでもないことが起こったのだ。


「…………」

「ヒメさんヒメさん。いつものアレ、やってやりしょう」

「えっ、あっ、えぇとっ」


 ただ一人なにも驚いてないユキの言葉に、ヒメが少し戸惑いながらも指を鳴らす。


「レ、レッツ【バーサーク】タイムっ!」

「推理の時間ですよ!」


 ――でも、なんで??


 決め台詞を言ったはいいものの、なに一つわかってないヒメだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る