第5話 最寄りの集落
異世界に来て2週間。危険生物を避け食材を採取しながら森の中を少しずつ進み、やっと最寄りの集落が見えてきた。
藪に隠れて双眼鏡で集落の様子を見てみる。
小さな農村だ。ヨーロッパの田舎のイメージに近い。歩いている髭面の人間発見。地球の白人男性と同じに見える。距離があるので推測だが、巨人でも小人でもなさそう。服装は作業着っぽい服の上下に帽子とブーツだ。
私の今の格好は、売店で買ったTシャツの上に作務衣、その上から防寒着として雨合羽、足には長靴、手には軍手。
もうすぐ日が暮れるし、いったん温泉宿に帰って明日また来よう。
◇◇◇
温泉宿に帰ると、シーツ、枕カバー、タオル、作務衣と半纏、スリッパは新しい物に換えられ、消費したアメニティやお茶、お菓子は補充されて、ゴミ箱は空で、掃除が済んだ状態になっている。
温泉宿のランドリーサービスは高いので利用していない。洗濯は自分で手洗いだ。洗濯物を減らすべく、私は昼も夜も作務衣を着ている。シーツを自分で洗う必要がなくて本当に助かった。
(明日は何着ていくかなぁ)
送迎を使うので歩くのは往路の一部だけとはいえ、運動不足だった体で野外活動は疲れる。だが帰って温泉に浸かるとHPとMPが全回復して、疲れは取れ擦り傷や痛みも治る。回復の泉の温泉バージョンだ。
それにしても、魔法を使っていないのにMPが減っているのはなぜだろう。温泉宿の維持やメニューを実行するのに使われているのだろうか。
◇◇◇
衣食住がそれなりになんとかなってる中、私の心配事は、異世界人アプリが入っているスマホと、所持金だった。
充電器は持ってきているが、このスマホはもう何年も使っている。故障や電池の寿命で使えなくなったらどうしたらいいのか。異世界人アプリが使えないと詰む。
だが、異世界人アプリについてはすぐに問題が解決した。
わざわざスマホで操作しなくても、頭の中でメニューが実行できるようになり、マップなどは目の前に浮かぶ実体がないディスプレイに表示されるようになったのだ。今ではスマホはアイテムボックスに入れっぱなしだ。
所持金は、まだしばらくは貯金に余裕があるが、今のままでは減る一方。
異世界人アプリのメニューには『家計簿』という機能が増えた。
ゼニーと円、二つのシートがあり、円の方には売店での買い物履歴と所持金残高が記載されている。
宿泊料は引かれていなかった。マジで良かった。
温泉宿の売店でゼニーが使えるかはわからないし、今のところ円とゼニーを両替する機能はない。
いずれにせよ、何とかしてゼニーを稼いで、円が底を突いてもやっていけるようにしないと不安だ。
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