甘く思考
レストランを出た後、抄に無理やりに連れて来られたデパート屋上。
その端に設置してあるベンチに並んで座ると、抄は真面目な顔をボクに向けて言った。
「作戦会議するぞ」
真剣な眼差しで。
背筋をピンと伸ばして。
事態を憂う表情で。
惜しむらくは、抄がチョコバナナクレープバニラアイストッピングダブルクリーム増しを片手に携えていることだろう。
レストランでは食べ切れなかった料理を押し付けてきたくせに、甘い物は別腹とボクに無理やり買わせた一品だ。
「……作戦会議って、死ね神対策のこと? ショウ、ちゃんと考えてたんだ」
「もちろんだ。大事な親友の危機なんだからな」
ここに至るまで、服屋でも、レストランでも微塵もそんな素振りはなかったけれども、抄曰く気にしていたらしい。
クレープを頬張り、口の端をチョコレートで彩っていては説得力は欠片もないけれど。
「……まあいいや。それで? 何か思いついた作戦でもあるのか?」
「ない」
その肯定はあまりにも清々しかった。
「昨日の掲示板にも大した書き込みはないし。というか、ちょっと目を離してる隙にエロ画像貼るスレッドに成り果ててるし。困ってる人間無視して煩悩をハツラツとさせてるんだから、人でなしだよなー」
「……それ、ショウが自撮り画像を貼ったからじゃないのか?」
「あー……」
抄はマウントを取りたいという理由で自身のセクシー自撮りを投稿していたはずだ。
エロ画像を貼る流れを作ったのは、間違いなく抄だろう。
「……。そういえば、そもそも死ね神ってなんなんだろうな」
それはあまりにもわかりやすい話題転換だった。
しかし掲示板の話をしていても事態が解決するとも思えない。
ここはあえて突っ込まずにおくことにした。
「やっぱ神様的な存在だったりするのか?」
「死ね神ってショウが勝手に呼び始めただけじゃないか。ボクとしては、神様よりも悪魔の方がイメージが近いんだけど」
実物を見たことはないけれども、命を代償に願いを叶えるというのは契約を重んじる悪魔のイメージにピッタリだ。
「悪魔ねえ……。それじゃあ、その悪魔はどうしてお前のところにやってきたんだ?」
「そんなのボクが知りたいよ……」
フィクションでよく見る悪魔は大抵呼び出される存在だ。
魔導書、黒魔術、禁忌の儀式。
手段はなんであれ、意図して呼び出されるのが悪魔のイメージだろう。
「わからないで済ませるなよタク。想像して、推測して、考えるんだ。この世に理由のないことなんかない。原因と結果はワンセット、因果は絶対だ」
「……随分とキマったセリフだな。なんの漫画?」
「月9のドラマ。今日から俺の決め台詞にしてくから。因果は絶対だ!」
「パクリじゃないか……」
「いいからほら、考えてみろって。お前が死ね神に付け狙われる理由を」
「そんなこと言われてもな……」
悩むボクを尻目に、抄はクレープに齧り付いて笑みを零した。
難題を押し付けておいて良いご身分だ。
「ん? なんだよ?」
視線に気付いたのか、抄があどけない顔で視線をボクに向けた。
「いや……美味そうだなって」
「それじゃあ、ちゃんと理由を考えられたら一口やるよ。制限時間は俺が食い終わるまでな」
皮肉のつもりだったのだけれど、抄には伝わらなかったらしい。
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