1、友未哲俊『二短調のカルテ』
友未哲俊『二短調のカルテ』
https://kakuyomu.jp/works/16817139557091295913
▶冒頭1万字以内に出てくるなかで一番好きな登場人物と台詞
第3話の「厚いゴム靴をはいた小女(こおんな)」と、その台詞、「不便でも、契約上あと半年は他の電力会社に乗り換えられないし」
▶1万字程度としてキリの良い話数
全話
▶具体的な想定読者
動物と芸術と科学とユーモアを愛する自由人。深刻な純文学や軽薄なラノベを嫌う人。自己批判のできる人。
▶その他、コメントなど
小鹿さま、はじめまして。友未哲俊トモミテツトシと申します。
今回、上記作品で参加させて頂きます。
どうぞよろしくお願い致します。
*
それでは、トップバッター友未さんです。
この方、俳句や童話などの短詩、短編をメインとされているようです。
また、『ストックブック』と称して、友未さん主催の自主企画に参加された方々への紹介および感想をまとめた作品もあります。
感想批評がお好きな方、ぜひ覗いてみてください。
https://kakuyomu.jp/works/16816452218770886042
こちらの『ストックブック』や近況ノートの書き方からもわかるとおり、言語に対する感覚は非常に冴えた方です。
ですから、作文ルールに関する指摘はほとんどありませんね。
あえていうなら、ウェブ小説にしては一段落が長い、などでしょうか。
一文に乗せる情報量もまた多めですから、もう少し短くした方が、読みやすさには寄与するでしょうね、という程度です。好みの問題。
たぶん、書き癖として、改行が少ない方なんでしょうね。
だからこそ、第4話にて、あえて改行多め&短い1話を入れることで、視覚的にも異質さを覚える、という効果が活きてくるわけで。
緩急の付け方として改行ペースをコントロールしていると理解できるので、単純に技術として受け取れます。
あとは、第2話「T氏」については、私なら大文字で「T氏」とするなぁ、とか、
第3話「…」は「……」、
「?」は「……?」もしくは「──?」にする。地の文で「?」を入れたら、一マス空ける、とかですかね。
とはいえ、文章自体の完成度が高いので、マジで好みの問題、で片付けられるレベルです。
細かい語彙については、
第3話「ティーパック」ではなく「ティーバッグ」ですね。tea bag 。
あと、第2話「あがり框」。
「
框を式台の意味で用いる人もいるので。
框:玄関の土間と床との間に用いられる横材。幅は取っても10cmほど。現代なら。
式台:玄関の土間と框との間に据えられる小上がり。
また、上がり框に立つ傘って、「あるべき場所に立」っている、とはならないのでは? と思いました。
新品とはいえ、石突は地面に接するものであるのに、「上」の空間である框に立てますかね? わざわざ壁に立てかけてまで。
框に置くなら、横たえるのではないでしょうか。
建築用語でいうと、第1話「天井」も。
平安時代まで、日本の建築には「天井」がなかったんですね。見上げれば、屋根裏だったわけです。
なので、私はこの部分を読んで、シャワーブースのように壁はあるけど「天井」はない造りを想像しました。
正解は、「風呂屋に覆いを設けていない」わけですから、「屋根」とするか「覆い」とするか、何かしら建物の外枠とわかる用語に変えた方がよろしいかと。
*
では、最後。内容についてですが。
ご本人でタグ付けされてますからね。
「存在風景」「不条理」「シュール」
不条理作品へと真面目に突っ込んでも詮なきこと。
とはいえ、内容に全く触れないのも寂しいので、内容から派生して感じ取った友未さんの為人を記しておきましょう。
「不条理」を描きつつ、規則正しさに強い憧憬を抱く。
登場人物の心情や物語の核心は、あえて読み取らせないように書かれていますけれど、
語彙の選択や筋立てなどは、実に真っ当です。
だからこそ、「読めてしまう」ので、物語全体のインパクトに欠ける。作品の書き手から滲み出る「不条理」がない。
良くも悪くも、頭の良い人が書いた箱庭だな、という印象でした。
頭の良くない人が書いた「不条理」系なら、
何が何だかわからない、読後感最悪、マジでこれにどんな感想書けっていうんだ??
ってなります。ええ、過去にありまして。
ですから、この作品は、心理的安全性が保証された状態で読める良作、というわけなんです。マジもんの狂気ではない。
友未さんご本人に興味がある方にお勧めしたい作品ですね。
友未さんの紡ぐ言葉に振り回される快感がありますよ。
*
ともあれ、トップバッターから書き甲斐のある作品に恵まれて、本当に幸運です。
ありがとうございます。
私も俳句、短歌、漢詩といった短詩を自作します。
チラッとながら読ませていただきましたが、友未さんの作品のなかでは、
「福引にはずれてもらう帰路の事故」
がお気に入りです。
https://kakuyomu.jp/works/16818093083973243140/episodes/16818093088521396711
じつに軽妙でユーモラス。
具体的な想定読者で「深刻な純文学や軽薄なラノベを嫌う人。自己批判のできる人」と来たときには、身構えてしまいましたけれど 笑、
なるほど、たしかにこの俳句を詠む人ならば、このような読者に読んでほしいと思うだろうなと、納得できました。
それでは。以上となります。
ありがとうございます。
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