第29話 三度ギルドへ
「ごちそうさまでした! 美味しかったぁ!」
私は日溜まり亭で遅めの朝食を食べていた。まぁ、遅めの昼食と言ってもいいんだけど。あ、だとすると朝食の場合超遅めって言い方になるのかしら。
(そんな定義に意味はないだろう)
突っ込みをしてくるはこ丸に私は文句を言う。
「何よぅ。そもそも私がこんな事になってるのははこ丸のせいじゃない」
そうなのだ。対象が凶行に及ぶならやはり人目の少ない深夜だと言うのでこっそり宿を抜け出して怪しい場所を探して回り、夜明け前に人知れず戻ってきたのよね。……なんの手がかりも得られないまま。
……で、寝て起きた私は宿の娘さんに
「よほど疲れてたんですねぇ。こんな時間まで寝てるなんて。お食事用意しましょうか? 特別ですよ」
ってクスクス笑いながら言われて現在食事中な訳。ありがたい事だけど。
「でも何も見つからなかったら私に出来ることはないんじゃない?」
(闇雲に歩き回っただけだからな。方法を変えてみた方がいいかもしれない)
そして食事後私ははこ丸に促され冒険者ギルドへとやってきた。ハンソンさんに聞きたい事があるみたい。まぁ、実際に聞くのは私になる訳なんだけど。
平日の午後という事もあり受付前は多くの冒険者で賑わっていた。
「とりあえず並んで待ってればいいかしら」
(そうだな)
私は列に並ぶものの冒険者らしくないのか妙に見られている感じがする。
(また変なトラブルはごめんなんだけど)
(まぁ、この場所には不釣り合いだと思われているんだろう。好奇の目は仕方ない)
私ははこ丸に頷きかけた所で通りかかったレーアさんに声をかけられた。
「あら? リノ様ではありませんか。どうされたのですか?」
「あ、レーアさん。ちょっとハンソンさんに聞きたい事がありまして」
「ギルドマスターにですか? ではすぐ取り次いで参ります」
ざわり。瞬間周囲がざわついた。……普通の会話をしただけのつもりだったのに。
更に間の悪い事にわざわざハンソンさんが迎えにまで出てきてしまった。私は数多の視線を一身に受けながらギルドの奥へと進んだ。
「何やら聞きたい事があるとか。粗茶ですがどうぞ」
ハンソンさんはアイテムボックスから茶道具一式を出して紅茶を差し出してくれる。
(ハンソンさん、アイテムボックスの事何も知らずに使ってるんでしょうね……)
真実が伝えられない私の心が痛んだ。けどはこ丸はそんな私の気分などお構い無しにハンソンさんにする質問を持ち出してきた。
(ギルドに表立って依頼が出ているとは思わないが)
「ギルドに依頼が出されているとは思いませんけど」
気分は同時通訳さんね。
(ここ最近の失踪者関連で極秘調査を行っていたりしないか聞きたい)
「ここ最近失踪者関連の調査を極秘でしていたりしませんか?」
ガチャン! ハンソンさんがカップを落としかけた。
「な、なんの事でしょう。……リノさんの様な方を探していたりはしませんが」
え? なんで私? ちょっと私に当てはめて考えてみる。
宿を出てヨーダさんに拉致され失踪扱い。幸い宿屋のご主人は届け出てはいなかった。
……まんま私じゃない! なんで私が調べられなきゃいけないの!?
はこ丸の言った事が自分にあてはまり狼狽える。
(落ち着けリノ。そんな話ではない)
「そ、そうよ私。そんな話ではないの」
「は、はぁ。では一体?」
(とぼけるのは無しだ。調査している者がいるのだろう?)
「とぼけないで下さいハンソンさん。誰かが調査しているのは分かっています」
ハンソンさんが緊張している感じがした。はこ丸はこの後何を言う気なのかしら。
(犯人を見つけるのは並みの者には難しい)
「犯人を見つけるのは難しいですよ」
(なぜなら)
「なぜなら」
気分は犯人を追い詰めた探偵と助手の気分ね。私が助手なのは分かってるわよ!
(その件には厄介な魔物が絡んでいる可能性がある)
「その件には厄介な魔物が絡んでいる可能性があるからです」
私はビシッとハンソンさんに言い切った。
「なんですって!? 魔物が?」
「え? そうなの?」
「え?」
「え?」
(おいリノ……)
私とハンソンさんは一緒に驚いてふと見つめあう。私が驚いてちゃダメな場面だったわ。はこ丸が呆れてるし。
あ、そこに箱憑きが絡むって事なのね。でもそれどうやって伝えるのよ。
「あー、厄介な魔物っていうのはですねぇ」
だが答えは意外な所から返ってきた。そう、ハンソンさんだ。
「なるほど。アイテムボックスが絡んでいるのですね? どうりで痕跡が何も掴めない訳だ」
「!? どうしてそれを」
説明に悩んだらまさかのハンソンさんの方からその単語を口にした。……どこまで知っているというの? 私はそれを問わずにはいられなかった。
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