第14節 -スペードをスペードと呼ぶ-

 海岸沿い道路のすぐ傍に彼の自宅は建っている。

 海を臨む町、リド=オン=シーの中でもダンジネス国立自然保護区へほど近い位置に建つ家は広い庭付きの2階建てだ。ダンジネスロードとコーストドライブの交点付近にあり、玲那斗達が電気バイクを停車した駐車場からも近い。

 建築されてからかなりの年月が経過しているであろうオレンジ色の屋根は、外壁と併せて全体的に黒ずみも目立つ。

 しかし、決して悪い意味での黒ずみというわけではない。まるでアンティークを想起させるような味のある劣化であり、かえってそれが長きに渡ってこの地に在り続けたという歴史的な証にも見えるし、大切に住まわれてきたという証のようにも見える。


 ジェイソンは自宅の庭の門を開けて2人を招く。

「ここが私の自宅だよ。さぁどうぞ中へ。」

 招かれるままに玲那斗とイベリスは中へと立ち入る。玲那斗は立ち入る直前にヘルメスを通じてジョシュアへ “地元住民から調査に関わる証言を伺う” 旨をGPSによる位置情報付きデータとして送信した。

 綺麗に整えられた庭を抜け家の玄関へと辿り着くと、ジェイソンが鍵を開け最初に中へ入り、先程と同じように2人を招き寄せた。

「失礼します。」玲那斗とイベリスは挨拶をして玄関ドアをくぐり宅内へ上がった。

 なめらかな白い壁紙に近年張り替えられたであろう艶のあるフローリングが空間を形作る。

 外見こそ古い民家ではあるが、中はとても綺麗に掃除が行き届いた空間で、家具や調度品もきちんと整理整頓がされている。じろじろと周囲を見渡すまでもなく、一目見ただけでこの家が家人によって大切にされていることが伝わってくるようだ。

 ジェイソンは2人をリビングへと案内すると椅子に座るように言った。

 リビングも入ってすぐの廊下と同じように白い壁に包まれた温かな空間が広がっている。周囲に置かれているものといえば、生活に必要な必要最低限の家具とおそらくは思い出の品だと思われる写真や小物くらいのものだ。

「見ての通り老人の家だ。大したもてなしも出来なくて申し訳ない。」

「いえ、お構いなく。」ジェイソンの言葉に玲那斗が返事をする。

「そうだ。昨日マーケットで買った良い茶葉があるからそれを淹れよう。普段は手を出さないんだが、あの子が珍しく『どうしても』とせがむものだから思い切って買ったんだ。」

「それは彼女が大事にしたい茶葉なのでは。そのような紅茶を頂くのは少し気が…」

 玲那斗が慌てて遠慮しかけた言葉を制止してジェイソンは言う。

「構わんよ。昨日帰宅した後にあの子が言ったんだ。『お爺様がもし大切な客人をお招きすることがあれば、この茶葉で淹れたお茶をお出しください。』と。あの子は昔から自分の為よりも人の為に何かをしたがる子でね。どうやら自分の為だけに買ったというものでもないらしい。そして、今私の前にいる君達は大切な客人だ。ならば問題はないというものだよ。」

 紅茶を淹れる為のお湯を沸かしながらジェイソンは続けた。

「もしかすると “予感” でもあったのかもしれない。」

「予感、でしょうか?」イベリスが言う。

「そう。君達のような人々を、近々私がここに招くのではないかという予感。あの子は勘が良いから。」

 ジェイソンは沸いたお湯を予め温めておいたポッドへゆっくり注ぎ込む。そして同じように予め温めておいたカップと一緒に2人の前に運んできた。

 紅茶の香りの広がりを楽しめるように作られた、優雅な模様が描かれた陶磁器製のカップにゆっくりと紅茶を注ぐ。

「砂糖とミルクはお好みで足してくれたまえ。きっとどんな飲み方でも楽しむことが出来る紅茶だろう。あの子の目利き通り、良い茶葉だ。」

 室内に芳醇な紅茶の香りが広がる。とても安らかな午後のひと時を演出するような落ち着いた優雅な香りだ。

「この国は世界各国から料理の味や質についてとやかく言われるが、ことティータイムについてなら話は別だ。この時間を何よりも愛する英国の演出する “お茶の時間” というものは、紅茶やデザートも含めて間違いなく世界一のものだろう。私が君達にこう言うのも妙な話だが、この地に来たのだからぜひ楽しんでもらいたい。それだけが今の私が出来る最大のもてなしだ。」

「ありがとうございます。頂きます。」

 玲那斗とイベリスは共に感謝を言って紅茶に手を伸ばす。

「それと、良ければこのクッキーも食べてくれたまえ。あの子のお気に入りだが、君達に出すのであれば文句も言うまい。」


 差し出されたクッキーを見てイベリスははっとした。

 その焼き菓子は自分が初めて機構へ訪れて少し経った頃に食べたものと同じものだったからだ。機構を束ねる総監と話をした時に直接プレゼントとして手渡されたクッキーと同じものである。

 イベリスにとってはクッキーというもの自体が生まれて初めて食べるものだったにも関わらず、どこか懐かしさを感じさせるような味わいが好きで、ゆっくり時間をかけて大切に味わったのが思い出だ。かれこれ今から2年近く前の話になる。

 玲那斗もそれに気付いたらしく、自分の方を見て軽く微笑んだ。


 お茶の準備を終えたジェイソンは穏やかな表情を浮かべた2人の様子を見てとって安心し、早速本題を切り出した。

「早速だが、まずは私から君達に質問させてほしい。それはたった一つの質問だ。君達はあの子と知り合いなのかい?」

 この質問を受けた玲那斗は思わずイベリスの方を見やった。昨夜の会話から彼女に心当たりがあるのはまず間違いない。

 そして今日の昼食後、彼女の姿を見つけるや否や文字通り光の速度で話をしに行ったことからもそのことは明白だ。


 ジェイソンの質問にイベリスが答える。

「心当たりがないと言えば嘘になるのでしょう。とても…そう、とてもよく似た人を私は知っています。その子の名前は “アルビジア” と言います。彼女はいつも眠たげにぼうっとしていて寡黙で。けれど自然が大好きで、優しくて。温かく周囲を包み込んでくれるような魅力をもつ子だった。遠い遠い昔のお話です。あまりにも似ているものだから、昨日マーケットの駐車場で彼女の姿を見た時驚いてしまって。」

「そうか。あの子に昨夜尋ねたんだ。イグレシアスさん、貴女と知り合いなのかい?と。」

「彼女は何と?」玲那斗が言う。

「よく似た誰かと見間違えたのではないかと言っていたよ。それ以上は何も。」

 ジェイソンはそう言うと紅茶を一口飲んでから言った。

「少し昔の話だ。私が彼女と出会ったのは今から10年前になる。ダンジネス国立自然保護区に原子力発電所があるだろう?私はそこで働く職員だった。あれはまだ冷え込みが続く春の夜のこと。3月の末、ちょうど復活祭の日だったな。発電所からの仕事帰りに保護区を車で通りがかったとき、荒野の中に1人きりで佇む彼女の姿を見つけた。緑がまだらな荒野を見つめながらなんとも悲しそうな表情をしていたのが印象的でね。気にせずその場を離れようと思ったが出来なかった。」

「そこで彼女に声を?」イベリスは言った。

「そうだ。どちらにしても夜に女の子が1人きりでいるのは危険だ。まだ冷え込みも強いと言うのに防寒着すら身にまとっていない。事情があるならあるで少しは役立ってあげられるかもしれないと思ってね。だが結局、なぜその場にいて、どこから来たどこの誰なのかもわからないままこの家に連れて帰ることになった。実の所、10年経った今でも彼女が何者なのかわからない。君達の手前、言いづらい事ではあるが…翌日、女性を保護したと警察に届け出ようかと思ったが本人に強く拒まれてしまってね。言葉にして言うわけではないが、連れ出そうとした時に悲しそうな顔をするあの子を見ていると無理やり突き出すということも出来ず、以来ずっとこの家で共に暮らしている。親戚の孫娘を引き取ったということにしてね。」

 玲那斗には分からなかった。なぜこの人は自分達にここまでのことを話すのだろうと。その経緯からすると、普通に考えれば決して他人に話さない方がいい内容だ。

 もし自分達が善意であれ悪意であれ、どちらにせよ警察や内務省入国管理局に問い合わせればすぐにでも彼らが飛んでくるだろう案件である。

 それをほとんど初対面である自分達に明かす理由とは何なのだろうか。

 視線を棚の上の写真に送る。そこには若かりし頃のジェイソンと仲睦まじく写る女性の姿があった。奥さんだろうか。

 失礼を覚悟で踏み込んだ質問をしてみる。「では、今は奥様も含めた3人でここに?」

「いいや。私は長い間独り身だよ。妻は結婚して間もなく病気で亡くなった。今から半世紀も前の話だ。もちろん子供もいない。」

「大変失礼しました。」すぐに玲那斗は失礼を詫びる。

 それに対し、分かった上で話したとでも言うようにジェイソンは穏やかな表情で言った。

「良いさ。身の上話を始めたのは私の方なのだから。私は齢73歳になる。遠い昔に妻に先立たれ、続いて両親も他界した時、いよいよこの世界に私一人だけが取り残されたような気持ちがしてね。あの時のことは今でも強く覚えている。それ以来、趣味らしい趣味も無かった私は仕事に打ち込む以外に何も無かった。数十年の間、仕事に打ち込むことで孤独を紛らわせてきた。そんな時にあの子が私の目の前に現れた。正直に言えば今の私にとっては希望の光のようなものだったのだよ。何と言っても結局、あの子が望んだからというよりは私が自身の孤独に耐えられなくなっていたのかもしれない。もう棺桶に足を片方突っ込んだ身だ。いつその時が訪れたって不思議ではないからね。」

 そうしてジェイソンはティーカップを口に運び紅茶を飲んだ。そしてゆっくりと息を吐いて言う。

「私ばかり話してしまってすまないね。私からの話は以上だ。ただ…もしこの地にいる間にあの子と出会うことがあれば、ぜひ話し掛けてあげてほしい。君達であれば良い話し相手になってくれることだろう。あの子はきっと毎日国立自然保護区へ足を運ぶはずだ。君達の調査目的があの場所に関係があるなら見かける機会も多くあるに違いない。」

「そういえば、今日のお昼に保護区で彼女の姿を見かけました。」玲那斗が言う。

「実の所、今日のお昼に私と彼女は少しお話しました。ここにはよく来るのかという、ただそれだけの会話でしたが。」直接話をしたイベリスは言った。

「そうか。あの子は何か言っていたかい?」

「ただ、 “そうね” とだけ。」

「実にあの子らしいな。」笑いながらジェイソンは言う。

「すぐに返事を返したということは、あの子も君に対して何かを感じたということだろう。」

 ジェイソンはおもむろにティーカップをテーブルに置くと、やや身を前のめりにして言う。

「イグレシアスさん。貴方は先程ご自身の記憶の中にある “彼女に似ているという女性” を “アルビジア” と呼んだね。奇しくもあの子の名もアルビジアという。〈アルビジア・エリアス・ヴァルヴェルデ〉。それが彼女の名だ。私は君達の前でただの一度もあの子の名前を呼んではいなかったはずだが、その名前が出てきたときに正直驚いたよ。運命というものを信じようと思うほどにね。」


 運命。彼は運命と言った。イベリスには彼が最後に言った言葉の意味はわからなかった。しかし、今の言葉で確信した。

 間違いない。あの少女はリナリア公国で自分と同じ時代を生きたアルビジアという少女そのものだ。万が一にでも似ている赤の他人などではない。

 どうしてこの時代に存在しているのかは分からないが、ロザリアやアイリス、アンジェリカといった面々の例から考えても、それがもはや不思議なことだとも思わない。

 であればこの場で確認しておくべきことは一つ。彼女もまた、何か特別な力のようなものを持っているのではないかということである。

 現代に生き続けているリナリア公国出身の人物達にあてはまる特徴は、人智を超越した異能をそれぞれが持っているということだ。

 財団の管理区域を荒らすというダストデビル。保護区内の非科学的な異常自然再生現象。

 仮にこれらがそういった類の力によるものだとすれば科学による説明など必要ない。足繁く保護区へ通う彼女がそういった力を持って働きかけを行っていると考えれば辻褄の合う話だ。

 イベリスはジェイソンに言った。

「モラレスさん。彼女と一緒に過ごしてきて、彼女について何か変わった所などはありませんか?」

「変わった所かい?」

「はい、例えば人よりも特別優れた特技があるというようなことですが。」

 問われた質問をジェイソンは真剣に考えているようだった。そして答えが返る。

「そうだね。不思議だと思うのは、かれこれ10年も一緒に生活していると言うのにその容姿がまったく変わらないといったところだろうか。子供のまま成長しないという病気があることは知っているし、とやかく言うつもりはないのだが…」


 玲那斗は考えた。成長ホルモン分泌に異常をきたし、成長が促進されない病気は下垂体性小人症という名前で確かに存在する。しかし、おそらく彼女の場合はこれではないだろう。

 先のイベリスの質問からして、間違いなく彼女の正体が自分と同じ、千年前のリナリアの忘れ形見であると確信したはずだ。

 だとすれば本当に問いたいのは〈異能を持つかどうか〉という辺りだろう。それが分かれば調査の必要もなく一連の現象の全てが彼女に起因するものかどうかが判別できるのだから。


 ジェイソンは続ける。「それと、もうひとつ。おかしな話だと思うかもしれないが…マーケットで購入してきた果物を彼女が剥いてくれると、どれもとても熟していて甘いのだよ。例えば、まだ少し熟成の余地がある固い果物を購入したとしてもだ。気のせい…ではなく果物そのものが彼女の手によって一気に熟しているような。とても不思議なのだがね。いや、聞かなかったことにしてくれて構わない。私の思い込みかもしれない。」


 求めていた答えが唐突に語られた。

 それだ。この答えにイベリスと玲那斗は僅かな間視線を交えた。

 半ば確信を持ったイベリスは重要なことを話してくれたジェイソンに礼を言った。

「ありがとうございます。また保護区で彼女と会うことがあれば、たくさんお話をしてみようと思います。」

「そうしてくれるとありがたい。アルビジアは自分から積極的に他人と関わろうとするタイプではないからね。本人にとってはお節介かもしれないが、もう少し誰かと交流をしても良いと私は思っている。私も生い先長くないだろうからね。万一の時、今度は彼女が一人ぼっちになってしまうと思うととても辛いのだよ。」

「そんな。まだまだ未来は長く続きます。」玲那斗は言った。

「そう信じることが出来れば良いが、この歳になると考えてしまう。自分にも死というものが近付いてきたと。どんな立場にいる人間でも死というものにだけは抗うことは出来ない。富や名誉や権力、どんな頑強な肉体や知性をもってしても避けることが不可能なもの。誰もが等しく最後に辿り着く場所だよ。」

 自らの未来を語るジェイソンは、悲しそうな顔をするでもなくとても穏やかな笑みを浮かべながら言った。

 これまでの人生に何一つ悔いなど感じていないかのように。満足そうな笑みを浮かべながら。

「そうだ。調査について聞きたいことがあると言っていたね。私の知っていることであれば何でも答えよう。予想では、ここ最近メディアが取り上げていた保護区内の異常な自然再生の件についてだと思うのだがどうだろう?」

「はい、その通りです。ご存知であれば教えて頂きたいのですが、例の現象が確認される前と後で何かこの地域で変わったことなどはなかったでしょうか。ダンジネス国立自然保護区だけでなく、海や町など、どんな些細なことでも構いません。」

 玲那斗の質問にジェイソンはしばし考えてから言う。「その話に関わる話として、財団の使う例の薬品による自然再生の件も触れないとならないかもしれないな。」


 ジェイソンはそう言うと、件の現象が起きる前に財団が新型の農業薬品による実験の範囲を拡大したというニュースがあったことや、かねてから実験観察を行っていた地区で目覚ましい環境保全効果が得られたというニュースが大々的に流れた話などをした。

 ニュースを追っていて感じたのは、この地で起きる変わった出来事というのは “財団の動きに合わせて” 起きていることだったという。

 そのほか、財団の実験が進むにつれて野生動物や野鳥の数が目に見えて減って静かになったとも。


「生まれてからずっとこの地で過ごしてきたが、ここ最近起きている出来事はまさにあり得ないことだらけだ。科学の進歩は目覚ましく、今では財団が使っているような薬品の開発まで可能になった。それがどういう理屈によるものかは私には見当もつかないし、例の自然再生についても何が起きたのかもわからない。今の時点ではきっと誰にも分からないことだ。だからこそ君達がこの地に訪れることになったのだと思っているが…今の話は何かの役に立ちそうかね?」

「はい、大変参考になりました。ありがとうございます。」

「宜しい。そう言ってもらえれば私としてもありがたい。」玲那斗の返事にジェイソンは満足そうに頷いた。

 だが、彼は手元のティーカップをゆっくりと傾け、紅茶を飲み干した後にこう呟いた。

「これは君達に言うことではないと思うのだが、私はどうもセルフェイス財団が今やっている自然再生計画、いわゆる緑の神による新緑の革命というものが受け入れがたい。実験、実証段階とは言え確実な成果を上げている研究なのだろう。しかし、人の手で自然をあそこまで自在に操ることができるものなのか?私の目にはどうにも “不自然” に見えてしまう。年を取ったことで頭が固くなっているのかもしれない。きっと、地球にとっては良いことなのだろうが、彼らの行いそのものが傲慢な行いに見えてしまう。 “偽りの友人は、正直な敵よりも危険” だ。彼らが薬品を用いてことを為すのが本当の意味で正しいのか。彼らのニュースを目にするたびにそう思うよ。」

 そして手に持っていたティーカップをテーブルの上に置いて言った。

「気付けばまた私の話ばかりをしてしまっているね。歳をとると周りが見えなくなっていけない。空の容器ほどうるさい音を立てるというが、しかし私の話がほんの僅かでも君達の参考になったのであれば嬉しく思うよ。」

「ありがとうございます、モラレスさん。」玲那斗は立ち上がり手を差し出して言った。

 ジェイソンも椅子から立ち上がり玲那斗の差し出した手をがっちりと握る。

「君達の調査が良きものになるよう願う。」

 そんな2人の横でイベリスは少し俯きがちな表情をして立ち上がっていた。

「イグレシアスさん。貴女はそのような顔をしてはいけない。先も言ったように、私のような老人に先が無いのは人として生きる上で避けて通れないものだ。未来ある人々はそれを気に留めることなく前を向かなければ。」

 ジェイソンの言葉にイベリスははっと我に返り微笑んだ。

「宜しい。若者はそうであるべきだ。」ジェイソンは頷いて言った。

「重ねてお礼申し上げます。では、我々は失礼します。紅茶とお菓子、ごちそうさまでした。」

 玲那斗はそう言って深々と礼をする。イベリスも彼に続いて礼をした。

「あぁ。また機会があれば立ち寄ってくれて構わないよ。今度はアルビジアがいるときが良い。本人がどう思うかは分からないが、あの子の話し相手にでもなっておくれ。」

 その後、玲那斗とイベリスはジェイソンに見送られながら彼の自宅を後にした。

 玄関ドアに続いて庭を抜け、門をくぐってコーストドライブへと出る。


 西の空に太陽が傾きかけている。この地では珍しい快晴の日が終わりに向かう。時刻はジョシュア達との合流時間に近付こうとしていた。

「海洋調査のデータも取れたし、住民の方の話も聞くことが出来た。隊長とルーカスのところに戻ろう。」玲那斗が言いイベリスは静かに頷く。

 こうして2人は近くの駐車場に停車した電気バイクに乗り、ダンジネス国立自然保護区の合流場所へと向けて走り出したのだった。



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