word58 「夢 叶え方」⑪

「最近学校で進路の話とかよくされるじゃん……私は家でもしょっちゅうされるんだけどね……それをさ、私はいつもみんなと同じように大学進学を目指す高校生として聞いてるんだ。進路希望を聞かれてもちゃんと県内か隣県にある国立大学だって答える……でも本当の私はそんなこと全く望んでなくて」


 僕は度々頷いて、折原の話を聞いた。泣き出しそうな声色から、この話が折原にとってどれだけ深刻な悩みなのかが伝わってくる。


「本当の私は今すぐにでも歌手になりたい。勉強に集中なんてしたくない。大学なんて行かずに夢を追いたい。高校だってやめたいくらい……なんて言ったら、君も無謀だって思う?」


「そんなことない……けどさ……」


「私もこの夢にリスクがあることは分かってる。それでも諦められないんだ。きっと夢を叶えるその日まで……」


「お、俺に何かできることはある?言ってくれれば力の限り手伝うよ」


「ありがと、聞いてくれるだけでいい。私も話したいだけだから……」


 折原は自分がなぜ歌手になりたいかから、今した話をもう一度詳しく話した――。


 折原は動画サイトに自分の歌を投稿してみたり、音声データを送るだけの簡単なボーカルオーディションに参加してみたりしているらしい。撮影場所はちょうど今いるここのカラオケらしくて、少し遠いけど誰にも見られたくないから通っているのだと……。


 でも、全然結果が出ない。動画も再生数が回らなくて、オーディションを受けてみた音楽事務所からの連絡もない。頑張り続けても結果が出ない日々に、ずっと誰かに追われているような恐怖感を感じている……大体そんな話だった。


 僕はあまり聞き返したりせずにただその話を聞いた。折原にもそれだけでいいと言われたけど、頭の中ではどこか自分が力になれるところがないかを探しながら――。


 でも、何も無かった。今の僕から折原に言えることなんて全く無かった……。


 本当はしたかった告白も、今日は無理だとすっかり諦めた――。


「やっぱ話すとすっきりするね。ちょっと心が楽になってきた」


 途中からずっと俯いて話していた折原が顔を上げて言った。久しぶりに顔を見た気がした。


「ほんと?良かった」


「誰かに話しておきたかったんだ、このこと。私誰にも話したことなかったから今日が言ったの初めて」


「そうなんだ。俺なんかが初めて……」


「本当は人気になってから周りの人にも言おうと思ってたんだけど、誰か1人くらい知っててほしくなったから。思い出も作っときたかったし、この街でやりたいことはやっておきたかったの。半分不安な気持ちを紛らわす目的だけど」


 その時言われた言葉で、だから僕とデートしてくれたし超激辛のラーメンを食べたんだと納得する気持ちがあった。しかし同時に、理解できない部分もあった。


「カラオケに来れば歌を褒めてもらえるかもしれないし、そしたら自信になるし、自己PRにも友達に世界一上手いって言われましたって書けるでしょ」


「え」


「私さ、来月またオーディション受けてみようと思うんだ。今度は東京に行って」

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