word55 「この服 変じゃない」①
そっか。そうだった。そういえば僕は今そういう状況にあるのだった。かわいいあの子からの返信を待っていたんだ――。
すぐに目を逸らしてしまったスマホをもう一度覗き込む。
「2023/01/27 16:37 折原 裕実 スタンプを送信しました」
やはり返信があったのは今だった。画面の上部で確認できる時刻の1分前。まるで、僕が黒いパソコンの映像を見終わるのを待っていたかのようなタイミング。
でも……結構返信遅かったな……。
いや、それは問題じゃない。ただ単に忙しかったりしただけかもしれないし、とりあえずちゃんと返信してくれたことが嬉しい。
僕は頬を膨らませながらスマホを手に取った。このスマホを操作すれば、すぐに待ち望んでいたメッセージを見ることができる。指をちょんちょんと動かすだけ。
しかし、僕は簡単なことをするのに頭がパニクった。
えっと、どうすればロックを解除できるんだっけ……。これは本当に折原さんからのメッセージだよな……。ここ押せばすぐに表示されるんだよね、本当に……。どうしよう……いや、見るしかないんだけど……。
あともう1タップすればトーク画面。そこで僕は完全に固まった。
もしもこの先に待っているのがデートのお誘いだったら、逆に二度と連絡とらないでという内容だったら……。考えれば考えるほど、手が動かなくなる。
部屋の中にしばらく、僕の深呼吸が響いた。部屋中の空気が僕の吐いた息で満たされるんじゃないかというほど、吸っては吐いて、吸っては吐いて。
そして、心臓の鼓動が耳まで届かなくったくらいのタイミングで、僕は先に進んだ。
「あのギターの話面白かった?」
「聞いてくれるんだったら話すけど」
さらに、微笑む猫のスタンプ。目に飛び込んできたのはそんなものだった。
いや、何というか――普通――。変に色々考えていた自分があほらしくなる。
とりあえず連絡を拒否されてはいなかった。ということは、次は返信しなければ。
もう一度大きく深呼吸をしてから、再び固まって思考タイムに入る。
何て返せばいい……こういうのって早く返したほうが良いよね……そんなこともないか……相手がスタンプ送ってきたからこっちもスタンプ使った方が……なるべくかっこいい感じで……かっこいいメッセージってどんなだよ……。
「聞きたい」
「最近ギター熱がすごくてさ、折原さんが言ってたギター弾くコツとかも分かりやすかったから」
それと僕も、たまに使う別の猫のスタンプ。折原からメッセージを受け取ってから15分後の送信になった。我ながら、考えた割には普通の返信である。
一瞬でかなりカロリーを消費した感覚がある。さっきまで映画のような映像を見てたのも合わせて、頭が重く感じる。寝ないと直らないやつだ。
しかし、僕はトーク画面を凝視しながら返信を待った。苦ではなかった。折原からの返信を待つなんて、こんな素敵な待ち時間はない。
返信があったのは30分後だった。
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