word47 「黒いパソコン お隣さんから」④

 作戦の最初は遠回しの質問――。僕が黒いパソコンとお隣さんとの関係について気づいていることをこれで伝える。


 もし、僕の予想通りお隣さんと黒いパソコンに繋がりがあるのであれば、そうすることでお隣さんから何かしらのアクションがあるはずだ。


 良いにしろ、悪いにしろ……何かしらの……。


 僕は滑り台の坂の部分に座る宇宙人の、一挙手一投足を見逃すまいと身構えた。


「へ~?」


 しかし、お隣さんから放たれた言葉は物凄く気の抜ける音だった。


「なにー?もう1回言ってくれる?」


「……あ、えっともし何でも検索できるパソコンがあったら、おじさんは何を検索するのかなって」


「何でも検索できるパソコンって?何かのテレビ番組の話?」


「いや、僕の妄想というか、もしもそんな物がこの世にあったとして、それを手に入れた人は何に使うんだろうって気になったって感じで……」


 僕は予想が外れていた時用にあらかじめいくつも用意しておいたカードを、1つ選んで切った。


「ふーん、何でも検索できるパソコンねえ……何でもっていうのは何でも?」


「……何でも?」


「この地球に今あることだけじゃなくて、過去のことでも未来のことでも、宇宙の果てでも、そのまた向こうの別の世界のことでも検索できるってこと?」


「はい。それで画像検索も動画検索もできて、何でも見ることができます」


「そうだね…………。うーんじゃあ、この世から争いが無くなる方法を調べるかね」


 堂々とした顔でお隣さんは言った。徳の高さを感じる答えに、見る目が変わる。かっこいいとさえ思った。


 間違いなくという予感がしていたのに外れていたのだろうか……。今のところの受け答えからは黒いパソコンとの繋がりが感じられない。まさか、とぼけているのか……。


「ちょっと、そこのベンチに座ろうか――」


 次の手を選んでいるうちに、何も言えなくなっていた僕にお隣さんが言った――。


 公園全体がよく見える位置にあるベンチにお隣さんと2人座った時には、随分心が楽になっていた。とりあえず、いきなり襲い掛かってくるみたいな展開は無かったから。


 いつでも土下座をする準備もしていたけど、する必要は無さそうだった。


 子供の遊び場としての役目を終えた、静かな夜の公園で第2ラウンドが始まる。


「君だったら何を検索するの?」


「僕だったらですか……何ですかねえ」


「何か悩みがあって、それを解決する方法が調べられたらなんて考えたから、何でも検索できるパソコンがあったらなって妄想したんじゃないんだ?」


「……まあ、そうですね。ただ単にふと考え込んでしまっただけです」


「面白いことを考えるんだね。学生さんだったら進路の悩みとか恋の悩みとかないの?」


「悩みが無いわけじゃないんですけどね。今回はそれとは関係ないです」


「……ふーん。あ、アメちゃんあげる」


「あ、どうもありがとうございます」


「もう高校2年生だっけ?」


「はい」


「そっかあ……時間が経つのは早いねえ……高校2年生っていったら17年…………もうそんなになるか」


「……ですねえ」


 お隣さんが頭を上に向けたので、僕もなんとなくそうした。2人して、夜空を見上げる。


 改めて話してみると、意外と普通に話ができて、そんなお隣さんにも、自分自身にも、なんだか笑ってしまいそうで不思議な感覚を抱く。


「もしも……もしもですよ。本当に何でも検索できるパソコンが実在したら、どうやってでも手に入れたいですか。誰かから奪ってでも」


「まだその質問をするのかい」


「……はい」


「奪ってでもか。まあ、人から奪うなんてやっちゃいけないことだから、そんなことはしないかな…………でも、さっき言った争いを無くす方法だけは検索させてほしいな」


「どうしてですか?」


「……………………」


「おじさん?」


「………………………………」


 その時、お隣さんはおもむろに上を見て腕を上げた。肘まで伸ばして真っ直ぐと、見ている場所と同じ方向を指差した――。


「私からも質問していいかな。君は……空に浮かぶあの星たちの……その1つから私がやってきたと言ったら信じるかい?」

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