第6話 入学ですのよぉお!!


 

 わたくし、晴れて学生になりましたわ。

 


 入学試験の翌日、領主から使者がやってきて学舎の件で色々説明を受けましたの。


 その説明曰く、わたくしは初等教育の特待クラスに編入されることになりました。

 週二日。領主宅の近くにある教室で午後から二、三時間程度学ばせていただけるそうです。

 

 しかも授業料など全て無料! 

 それどころか、学ぶことで働き手が減るので家に多少の手当が出るとのこと!!


 領主様曰く、優秀な人材が育つことは結果として国益につながる。みたいなことらしいですの。 


 『損得による善意は無性の愛より信用できる』とは前世での父の言葉ですが、言い得て妙ですわ。

 存分に活用させていただかなくては!!


 そんなこんなで試験の二日後には入学することになりましたの。



 

 そして初めての通学! 

 

 教室は使用人たちが住む長屋の一室で、そこに生徒たちが集まっているそうです。

 ここを成り上がりの第一歩とさせていただきますの!


「では私は授業の準備をしてきますのでタマラさんは先に皆に挨拶をしてきてください」


 ということで教室の前で取り残されたわけですが……。


 ここは貴族が通う学校。 

 わたくしのような者がどういう扱いを受けるのか未知数ですわ。

 

 昨日の説明では貴族と言っても田舎貴族なので元貴族でも受け入れてくれるだろうという話ですが、そううまくいくはずがありませんの。


 ここは開口一番、堂々と名乗りを上げて主導権を握らねばなりませんの!!


 わたくしは扉を勢いよく開け、

 

「はじめまして、わたくしタ――」


 ばしゃっ、という音と共に視界が遮られました。

 次いで感じるのは冷たさ。

 晴れた視界では、バケツを持った少年のしたり顔。


 そう、わたくし水をぶっかけられましたの。


「ははは! 油断したな! これがオレ流の歓迎のあいさつだぜ!!」


 と高笑いを始めました。

 他のクラスメイトらしき人達は、気の毒そうな目でこちらを見てますの。

 これで心が折れると思っているようです。


 なめんじゃねえですわ。こちとら豚の血浴びせられたことだってありますのよ!!


「まあ、これがここでの歓迎の仕方ですのね!! うれしいですわ。ええ……だからお礼にハグをして差し上げますわね」


「へ? いや、いらねえが」


「まあまあそう言わずに」


 とわたくしが距離を詰めると、どうやら彼もこちらが本気であることが伝わったらしく……。


「お、おいやめろ来るんじゃねえ!!」


 ダッシュで逃げ出しました。


「逃がしませんわよ! わたくしの感謝のハグでずぶ濡れになりなさいな!!」


 という感じで追いまわし、捕まえ、感謝のハグという名の関節技をキメていたところ。


「まあ! 二人とも何してるんですか! タマラさんは早く服を絞ってきなさいジョルジュさんはいたずらの罰としてタマラさんにタオルを運んできなさい!」


 という感じでモンロー先生に教室を追い出されましたの。

 

 ……って、わたくしまた自己紹介を遮られてませんこと?


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