第22話「天才シェフのポワレ君」


「ねぇ、先生ワイン飲んじゃダメかしら?」

「ダメですよ先生。このあと運転するんやから」

「えぇ明日運転するんからぁ〜お願いぃ〜井宮さん〜遠野さん〜」


 そこでマリネ先輩は、何やら考え込みアンチョビ先生に耳打ちしました。


「うんうん、するする〜」

「では良いでしょう!」

「いや良くないわ。今日はうちらだけじゃなくて農業部の生徒もおるんやでマリ?」

「山形先生〜ワイン持ってきましたよ〜」

「はぁああ!?」


 ジュレ先輩は驚いて声のする方を見ますと、

 農業部の顧問の先生と保護者一同がやってきたではありませんか。

 何やら執事の方もいます。


「アンちゃん〜」

「お母さん!?」

「山形先生から連絡があって、今日は遅くなるから来ちゃいました〜てへっ」

「クククッ……時は来た……」

「ちょマリ、あんた知ってたん?」


 サムズアップして見せたマリネ先輩。

 電灯に照らされた明かりのせいか、眼鏡が眩しく光っています。


「いやはや紳士淑女の皆々様。今日は農業部とお料理部の共同課外活動に参加して頂き、誠にありがとうざいます」

「共同課外活動? なんでほうれん草貰いに行くつもりがこんなことに……」


 呆れるジュレ先輩とは裏腹に、体操着姿のままお辞儀をするマリネ先輩は、何とも生き生きとしています。


「今日はごゆるりとお楽しみ下さい。それではさっそくではざいますが本日のメインディッシュをご紹介しましょう。ポワレ君、カモン!」


 そう言ってポワレさんは、農業部の何人かに手伝ってもらい大皿をテーブルに置いていきます。


「ほうれん草と鮭のクリームパスタでございます!」


『おぉお』


「今やパスタ業界では王道中の王道。ですがいつの時代も濃厚なクリームソースと鮭の塩気は絶妙です。さらに採れたてのほうれん草の色合いも皿を鮮やかに彩ってくれます。皆さま食感にもご注目下さい。うちの天才シェフのポワレ君が腕によりかけました。小皿に檸檬もご用意していますのでお好みでおかけ下さい」

「なんかポワレちゃん大活躍やな」

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