第20話「ポタージュ」


 ちらほらと農業部の方も集まってきてます。


「わぁ、とてもいい香りがしますわ〜」

「ほんとですわ。お料理部の皆さんごきげんよう」


『ごきげんよう〜』


 ぐつぐつとジャガイモが煮崩れしかけてきたところで、火を止めます。


「よぉし次、カマキリの出番だ! カモン!」

「フードプロセッサーな」


 ポワレさんがフードプロセッサーを持ってきます。

 円形幅15センチほどの筒の中心柱に二本の刃がついています。


「なるほど、これがカマキリ……」


 ロティさんは、初めて見るフードプロセッサーに興味津々のご様子。

 さっそく鍋の中身を一部フードプロセッサーに投入しました。

 今日は人数が多いので何度かに分けます。

 フードプロセッサーに蓋をし、手のひらで上から抑えます。

 するとギュイーンとカマキリの刃が、高速で回転しはじめました。


「うおぉおおお」


 固形だった野菜たちが、目にも見えぬ速さでドロドロとした薄緑色の液体に変身していきます。

 ロティさんは、驚きに目を輝かせています。


「ちなみにお家にフードプロセッサーなんかないでーって人はミキサーでも代用出来るからなぁ」

「ジュレ君補足ありがとう」

「うぅ……また脳内で誰かの声が……」


 十分に撹拌し見た目が滑らかになればオッケーです。


「次はシノワ、君に決めた!」

「ただの調理器具な」


 シノワと呼ばれるのは円錐形の漉し器です。鍋にセットし、フードプロセッサーの中身をシノワに流し込んでいきます。

 この工程は、家庭では中々面倒なので省略可能です。

 しかしこの工程を挟むことにより、ポタージュの目の細かさが均質になります。そうしてより滑らかになり俗に言う「レストランの料理みたい」となります。


「ちなみにお家にシノワなんかないでーって人は別に茶漉しでも代用出来るけどお家の人に怒られんようにしぃなぁ」

「ジュレ君補足ありがとう」

「うぅ……声が……聞こえる……なんでやぁ……」

「よぉしクライマックスだ。生クリームとソルト&ペッパーをカモン!」


 漉した液体を全て鍋に移し替えれば最後に生クリームを加え、弱火で温めます。


「ちなみにお家に生クリームなんかないでーって人は牛乳でも代用可能なぁ」

「ジュレ君補足ありがとう」

「うん。これはうちがホンマに思ったことやから……って誰に言い訳してるんやろ……」


 最後に塩とコショウで、味を調整します。

 余裕があればバターを再度足します。そうするとより風味とコクがついて「レストランの味」になります。


「アァ、トテモイイニオイガシマスネェ」


 クリスティーヌさんもやって来ました。

 お料理部の面々は、最後に味見をして互いに顔を綻ばせます。


『ほうれん草のポタージュの完成〜』

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