第18話 不安を取り除く言葉

「ヒナタは見つかったかね?」

「はい。街外れでご飯を食べているみたいです」

 クロスとレイナの部屋に着くと、ヒナタを探すために集まっていた家政婦達に声をかけたクロス。少し緊張感のある部屋の中、一人ヒナタの居場所を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす

「それは良かった。本も一緒か?」

「はい。一緒にパンを食べていて楽しそうにしていますよ」

「そうか。ヒナタらしいな」

 現在の報告を聞いてクスッと笑うと、部屋中にあるたくさんの本の中から一冊を取り出して、読みはじめたクロスを、困ったように顔を見合わせる家政婦達。ノアもクロスの様子を見ながら、ふぅ。とため息ついて壁に持たれた

「アカリ様はどうしますか?ずっと、探していると言うのもさすがに……」

「今からレイナと街に行くと言っていたから、今は何も言わずにいるように。レイナには、なるべくヒナタと逆の方向に捜索するように伝えておかねばな」

 本を受け取り、そう話すクロスにノアや家政婦達は何だか浮かない表情。それに気づいたクロスが少し首をかしげた


「どうした?」

「あまり、ヒナタ様にもアカリ様にも良くないのでは……」

「そうだな。本当なら……」

 と、話をしていると突然、コンコンと扉を叩く音が響いた

。慌てて持っていた本を背中に隠した家政婦達。その直後、そーっと部屋の扉が開くと、アカリが寂しげな表情で扉の隙間から覗き込んできた

「お父様、まだお話続きそうですか?」

 しょんぼりとした声で話しかけるアカリ。その声と表情を見て、アカリに思わず駆け寄って抱きしめた

「ごめんね。もう終わるよ」

 レイナや家政婦、ノア達が見守る中、抱きしめられてお返しにともっと強くクロスを抱きしめるアカリ。少し顔を上げて、じーっとクロスの顔を見た


「お父様。ヒナタは見つかりましたか?」

「いや。でも、もう少しで見つかるかもしれないよ」

「……本当に?」

「ああ、だから悲しい顔をするのは、もうお止め」

 クロスの言葉に少しずつ笑顔が戻ってくアカリ。クロスから離れて、レイナの所に走ってぎゅっと抱きついた

「うん、早くヒナタ見つかるといいな!」

 笑顔のアカリを見て、頭を撫でて微笑むレイナ。二人の様子を見て、クロスが部屋の扉を開けた。それに気づいたレイナがアカリの手を引いて部屋を後にした。それに続くようにノアも部屋を出ると、同じく部屋を出ようとドアノブに手をかけたクロスが、ふぅ。と一つ深呼吸をすると、部屋に残る家政婦の方に振り向いて声をかけた

「すまないが、後を頼む。何かあればすぐ報告を」

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