無色
黒心
無色
夢の白さを恨む。
周りは輝かしい華やかな色の夢を見ているのに、ここに立つ人間の夢は儚い白黒の三次元。立体的であるだけマシであろうかその夢を、壊したい。
いや、そもそも持っていないのかもしれなかった。飛び出した鳩の跡を追っても羽は落ちてこないように、夢の跡を追いかけても虚空に落ちて前に進めないだけだったのかもしれない。
カラカラに渇いた喉を潤す液体は自分の血のみ。腕を噛み切ってもぽたぽた堕ちるのは黒っぽい何かだ。飲めるわけがない。他の人は沢の水を探し出せるのに。
白く白濁した透明な矛盾に身を悶えて苦しむ、紛れて分別のつかない白湯が流れてきた。足を取られ来た道すら辿れず細道に手を入れることすら叶わない。
黒く透き通り黒ずんだ手の跡を、残火で辿れば光は失せて上った月を見れない。
片側に落ちた靴下が喋る時には決まって花火が上がる。潤う靴の中身を喉に突っ込むと腑が逆さまになってしまうだろう。
赤の他人には分かるまい。これは運命でも必然でもないと。
せめて、口火を切ってしまった酒の一生を飲み干したかっただけなのだ。白い酒は味無しの苦いだけ、黒い輪郭に覆われたパンドラの箱なのだろう。
乾杯。
五臓六腑の逆さまに酒は逆流する。
色のないフィルムに映写機は存在しない。これは色のない夢なのだ。そうに違いない。たがら枝別れの一本が折れた程度で腐った巨木は倒れない。
乾杯を。
光り輝く自然色の世界に。
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