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―PM5:56―
いつもと違う時間、違う車両に乗り続けてから二週間。
この時間の電車内は少しだけ混雑していて、私は定位置の入り口付近のポールに掴まって発車の時間まで立って待っていた。
手持無沙汰になるこの時間、私はいつだったか翼くんが読んでいた推理物の小説を読んでいた。
でもその内容が難しくて、誰が怪しくて誰が怪しくないのかよく分からない。
疑ってかかれば、登場人物全員が怪しい気もして来る。
私は半分も読まない内に心折れそうになっていた。
はぁ、とため息を吐きながら天井を見上げる。
『ドアが閉まります』とアナウンスが流れ、プシューとドアが閉まる音がする。
「美里ちゃんっ!」
「え?……うわぁっ!」
ドアが閉まる寸前、誰かに腕を引っ張られ、半ば引きずり降ろされる様な感じで電車を降りた。
ドアが閉まり、電車が動き出す。
「やっと見付けた……」
「……翼くん……どうして……?」
そこには、息を切らせた翼くんがいた。
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