第26話 フーリエの独白、そしてアカとクロはリカルド山脈へ
僕はフーリエ。
フーリエ・フォン・バルフリッツ。
一応『
さて、その『翼』同士が今回は直接ぶつかっちゃったわけなんですけど、何て言いますか、仕方がない状況だったと思うんですよ。
だって『翼』の方々に対抗できるのはその実力を持っている方だけなんですから。竜師の上澄みで組織されている『爪』であっても『翼』を単独で抑え込むのはかなり難しいことなんです。だから『翼』の誰かが暴走したり、今回みたいに侵略して来ちゃったらこちらも『翼』が対応するしかないってことです。
そのせいでこちらの『翼』のアルドレア様は大怪我を負ってしまったわけですが。あちらの『翼』であるパロミデス・アロン様もかなりの深傷を負って撤退したようなので喧嘩両成敗って感じですかね。
そんな感じで大事になった今回の一件ですが、元はと言えばパロミデス様が侵略してきたのが事の発端でしてね。
行方不明になっている第7翼のガレス・センドリッチ様。そこの領地を第6翼のパロミデス・アロン様が侵略して来たんです。目的は領土拡大だけではないとは思いますが今は分かりません。今後調べていくしかないですね。そもそも行方不明になったガレス様だってパロミデス様が関わってるみたいな口ぶりでした。
そう言ったわけで第11翼であり我々の主であるアルドレア・センドリクス様が防衛に
しかしそこでまた問題が起きました。第6翼パロミデス様と対峙している時に第7翼『爪』第1席のルダマルコが裏切っちゃったんですよ。アルドレア様を背後から刺して第6翼陣営に寝返っちゃったんです。
あの野郎マジで許せねえ。
かなりピンチでした。ですがそこにアカさんが駆けつけてくれたんです。しかも第6翼『爪』第2席のトマス・トルマリンを連れてね。トマスは元からパロミデス様には不満を持っていたみたいで、アカさんが懐柔してこちら側に寝返らせたみたいでした。まだ全てを信用することはできませんが貴重な戦力としてこれから見ていきたいところですね。
ていうかそのアカさんの話になるんですが、あの人本当に今までどこで何をしていたんですかね。クロさんにしてもそうです。あの強さや頭を持ってるのに今まで誰にも知られずにどう生きてきたんでしょう。
あれだけの力があるなら普通、竜師になるのが一番手っ取り早く富や名声を得られるはずなんですが。まあ、一般人からすると竜師はそんなに馴染みが無いですから富や名声と言っても上流階級での話ですけど。
なんにしても、あれだけの逸材を我々の陣営に引き込めたのは幸運と言えるでしょう。これからも彼らをこちら側で使えるようにしなければなりません。果たして彼らに勘づかれずにできるでしょうか。
これからの彼らの動向には要注意ですね。
今回力を貸してくれたのは渦中のガレス領にある結界領域の探索の許可をもらうためらしいので、とりあえずそこは惜しみ無く協力したいと思ってます。個人的にも興味がありますからね。
さてさて、一体何をしに行くつもりなんでしょうか。
───────────────
「くそがぁぁ!!」
荒ぶるパロミデスは帰還して早々、近場にあった装飾棚を粉々に破壊した。
「落ち着けパロミデス」
「てめえ俺に指図する気か?」
「そのつもりだ。まずは傷を癒せ」
パロミデスの睨みを平然と躱してその男は臆すること無くティーポットからお茶を注いでいた。そしてそれをすぐに飲み干す。
「計画外の障害だよあれは」
「てめえがちゃんと想定してりゃこうはならなかっただろうが」
「その通りだな。だが不可解なのは、あの赤髪ともう1人、どこのやつか全く検討が付かないということだ」
「ちゃんと調べとけくそが」
「そうカリカリするな。あとはこっちで進めておく。とにかくお前はしばらく回復に専念しろ。それにしてもトマスの裏切りは痛いな。あの竜能は使えるんだけどな。さらにはボンズとアルレリオの敗北か。赤髪と黒髪の2人がいなければ容易に事は済んでいたのだが……」
男は思案する。
所属不明の強個体の出現。
それが何を意味するのか。
奴らの目的が何なのか探りを入れる必要がある。どうせ向こうも一枚岩というわけではないだろうしな。
「あの赤髪が来なけりゃ俺はアルドレアを殺せたぜ」
殺すつもりでいた。それが計画だった。
敵対派閥の筆頭である第7翼はすでに消した。次に第11翼。そして第13翼と順々にやっていくはずだった。まさか第11翼陣営に戦力の追加があったとは思いもしなかった。第11翼と第13翼も合流させてしまったし、計画の練り直しが必要だ。
それでも第11翼のアルドレアには相当のダメージを負わせた。徐々に削っていけば良い。こちらの戦力は依然有利なままだ。
「奴らの力はすでに見た。次はない」
男の目は虎視眈々と次を見据えていた。
────────────────
「ご無事でなによりです。アルドレア様」
竜議城内にある病棟の1室にアルドレアは寝かされていた。アルドレアが目覚めるとすぐ側にスピノールが立っていた。
アルドレアは痛みを感じながらも上体を起こした。
「お前が皮肉を言うとはな」
「本心ですよ」
柔らかく笑うアルドレア。久しく見ていなかったその柔らかい表情にスピノールも思わず笑みを
「しばらく、お前に任せることになるな」
「はっ。承知しました」
深々と頭を下げるスピノール。主のためならばどんな苦労も厭わない。例え翼と対峙することがあろうとも、主の障害となるならば全力でそれを排除してみせる。スピノールにはそれだけの覚悟があった。
「それでアカとクロはどうしてる? 料理でもしているか? 奴らめ、料理人だとか抜かしていたからな。何かできたなら持ってきてもいいぞ。私が食べてやろう」
「いえ、それが……2人はすでにここを
「なに?!」
「リカルド山脈に向かいました」
「あそこは不可侵結界が張られているだろ?」
「はい、ですのでフーリエを連れていかれました。フーリエならば結界を一部無効化できますので」
「……まあそこに行くことは戦いが終わった時点で許可するつもりだったから良いが」
「私も後から様子を伺いに行って参ります」
「そうしてくれ。トマスはどうした、確か奴はこちら側についたのだろう?」
「トマスもお2人に着いていきました」
「どういう組み合わせだ。大丈夫なのか?」
「フーリエならば何かあっても対処できるでしょう。それにトマスが本当にこちら側に付くかどうかもこの際見極められます」
「……そうか」
アルドレアは再びベッドに体を預ける。
「依頼を出そう」
「依頼、ですか……?」
「アカとクロにだ。奴らは料理人だと言っていたな。奴らに依頼を出す。リカルド山脈から戻ったら病み上がりの私に合う料理を作らせるのだ」
「かしこまりました。では私が直接依頼を持っていきます。実力の無い者ではリカルド山脈は越えられませんので」
サッと頭を下げてスピノールは部屋を後にする。
訪れたささやかな静寂。これから起こるであろうパロミデスとの再戦を思うと頭が痛いが、今は少し休ませてもらおう。
「ふっ……野菜は嫌いだと伝えておかなければな」
アルドレアは再び目を閉じた。
──第2章 完──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます