第18話「謁見諸々」
第18話
「ソラ殿、もうすぐ王都に到着するぞ!」
そう俺に声をかけるのはここハルバート王国第二王女エミリア王女だ。俺はレイスさんに託された?というか貰った袋を持って、ハルバート王国の王都に行っていた。
「うぉ、これは凄いな。流石は王都だ、あそこにある城も凄く大きいし綺麗だ。」
「うむ、そうだろうソラ殿。それではまず王城に行くとするぞ!」
えーっ!?何言ってんだのこの人。なんで、宿とるとか、学園のあれこれとか、冒険者協会行くとかじゃないの。
「な、なんでですか!?俺何かやらかしました!?」
少なくとも何か盗んだり、人殺したりなんかはしてないぞ。
「はぁソラ殿、つい昨日大きくやらかしたばかりではないか……。」
ん?え?昨日………?やっぱり分からん。街救って寝ただけだろ。
「えーっと、エミリア王女?」
「えーっとじゃないだろう。ほら倒しただろ黒!龍!。神!話!級!を!」
確かに。倒したけど何か悪かったのか?天然記念物とかだったのか?でもあのまま放っておいたら確実に街滅んでたと思うんだけど。それにエミリア王女やレイスさんにも感謝されてた気がするんだけど。
「えーっとそれって悪いことなんですか?」
「はぁ、ソラ殿。ソラ殿は本当に何を言っているのだ。逆だ逆!むしろ褒美を与えるために城に行くのだ。ソラは神話級を倒して、街を救ったのだぞ。罰なんて与えられるわけがないだろう。ほらそれじゃあもう行くぞソラ殿。」
エミリア王女がいい、俺は半ば強制的に城へと連行されて行った。
***
「これは近くで見ても本当に凄い城だな。」
俺は実際にこんな近くで西洋風の城を見たのは、前世含め初めてだったので、思わず声を漏らしていた。
というかこの流れって、このまま国王的な人と謁見するとかいうのじゃないか?
待てよ、ということはエミリア王女ってここの国の王女だから、俺はこれからエミリア王女の御父上と会うってことか。
「うむ、そうだろう。ここが我が家にして、ここハルバート王国の王城。それでは近衛騎士団の諸君!君たちはもうここでもう戻ってくれて構わない。其方らも長旅だったしな。今日はゆっくり休んでくれ。」
エミリア王女はそう声をかけ、エミリア王女と俺は近衛騎士団の方々と別れた。まぁもう城の門くぐったし、護衛はいらんってことなんかな?
それから俺達は城内へと入り、俺はエミリア王女とも別れて客間的なところに案内された。
「それではソラ殿はここで少しの間休んでいてくれ。飲み物とかはメイドか執事が持ってくると思うから。私は父上……国王に謁見の許可と報告にいってくるからな。」
エミリア王女はそう言って部屋から出ていき、俺は客間に一人という状況になった。
「それにしても流石は王城だな。かなり、というかどこを見ても豪華だな。まぁ客間は客を待たせる場だから豪華にするのは分かるけど。」
それからしてすぐに、執事さんと思われる人物がきて紅茶を淹れてくれた。またその紅茶は流石!という言葉しか出てこないくらい美味しかった。
「……おぉ貴方様がソラ殿でありますね。エミリア王女から少し話は伺っております。」
紅茶を淹れてくれた執事さんはそう言って俺のことを見定めるようにして見てきた。そこで俺は上手く使い方は分からないが魔力を溢れ出させるようにした。エミリア王女たちが敵なんて毛頭思っていないが、一応ね。こういう時はさ自分のことをちゃんと示しておかないとね。変に舐められるのも嫌だし。
俺が魔力を放出し始めると執事さんが、
「…………これは予想以上ですね。私も以前はSランク冒険者であった身ですが、私の知る中で一番底が知れず、濃い魔力を持っておられる。これなら神話級をも下すかもしれませんね。………差し支えなければ、何魔法にお使いになられるのか教えていただけますかな。エミリア王女によれば何やら炎魔法に近いという話でしたが…………」
まぁ言ってもいいか、というか何か会った時から強そうとは思っていたがまさかSランク冒険者だったとは、流石王族の執事だな。
「はぁまぁ言っても良いですが、空間魔法とか時空間魔法とか大それた物じゃないですよ。………僕が使う魔法は"熱魔法"というものです。まぁ熱を操れるってとこですね。」
俺がそういうと、少し執事さんの顔に困惑しているような表情が現れた。まぁ普通に見た感じだと気付かないだろうが俺は見逃さなかった。まぁお世辞にも魔法を除いたら、文明レベルは中世レベルだし、科学とかも発展してなさそうだしな。熱の強さとか使い道を知らなくても仕方はないだろうな。
「そうですか、熱魔法……ですか。それで神話級を討伐するとは、末恐ろしい。これからも活躍を期待するばかりです。それでは私はここら辺で失礼いたします。」
執事さんはそう言って、お辞儀をしてから待合室から出ていった。困惑はしても流石は王城の執事だ。というかまぁそりゃ熱を研究してなかったりする人からすれば、"熱何て"って思うだろうな。
***
そんなこんなで少しの間、客間でくつろいでいたら後ろから声をかけられた。
「ソラ殿、待たせてすまない。今から謁見をしたいのだが、服を着替えたり準備をしてきてはくれないか。」
俺はエミリア王女にそう言われて、俺はエミリア王女と一緒に来ていたメイドさんたちに連れていかれて、何やら豪華そうな服を着せられたり、髪を整えられたりした。
それから再びエミリア王女と合流して、凄く豪華で厳つい扉の前まで来た。おそらくここが王の間だろうな。
まぁ俺はそんなことよりも、エミリア王女と合流した時にエミリア王女が急に似合っているぞ。と言ってきたり、顔を凝視してきたりしたが、一体何だったのだろうか。好意を持たれているようにしか思えないのだが気のせいだろうか?いや気のせいだな。自意識過剰だな。きっと前世モテ過ぎなくて勘違いしちゃったんだな………。
"ガダン!!"
そんなことを考えていると、突然厳かな音を立てて王の間の扉が開かれた。
***
王の間の扉が開かれて俺が入ろうとしたら、ファンファーレ的なものが流れた。いわゆるあれだ、"パンパパパパーン"ってやつだ。俺はそれを聞いて緊張を覚えつつも、エミリア王女とともに玉座に続くレッドカーペットを歩いてゆく。
それにしても凄い人数だな。これ皆んな大臣とか官僚とかいうやつだろうか。穏やかそうなでヒョロい人もいれば、めっちゃ厳ついゴリラみたいな人もいれば、いかにも偉そうにしているブタみたいなやつもいるけど。……本当に動物園みたいだなw。
俺とエミリア王女は玉座の前につくと膝をついて、頭を垂れた。するとその瞬間にファンファーレ的な演奏がちょうど止まった。そして沈黙の中それを切り裂くように重厚で厳かな声が聞こえてきた。
「面を上げよ」
そう、これはエミリア王女の父上、つまりハルバート王国の国王がそう言った。
「まずはエミリア、此度の急な遠征ご苦労であった。して、そこの者は………?」
エミリア王女、国王にはまだ説明していなかったのだろうか?執事さんに言っていたのは単純に距離が近いからだったのかな。
「はい、国王陛下。まず順を折って説明いたします。まず此度の遠征はスターリングウォードにて発生した
国王陛下は厳然とした態度をとりつつ、続けよ。と言った。
「はい、率直に申し上げます。………今回の
エミリア王女がそう言った瞬間、王の間がとても騒がしくなった。大臣やら官僚やらは口々に「不味いぞ」だとか「国が滅ぶ」だとか言っている。このままだとかなり混乱していきそうだった。
しかしそれを国王の隣にいた宰相らしき人が
「静粛に!国王陛下の御前だぞ!」
と言い再び静かになった。そして今度はそれを聞いた国王が「エミリア、続けよ。」と言い、またエミリア王女が話し出した。
「はい、先程申した通り今回の
するとまた、王の間が騒がしくなった。そりゃレイスさんやエミリア王女のリアクションを見れば凄いというか、やばいことなのかもしれないけど。
するとそこで国王が口を開いた。今度話しかけてきたのはエミリア王女に対してではなく俺に対してだった。
「シンモン ソラ殿、今エミリアが申したことは誠であるか?」
「はい、差異はありません。恐れながら、信じられない方も多きことかと存じます。それならばいくらでも、どなたにでも確認していただいて構いません。それに、私は今その黒龍の死体を保持しております。それにつきましても確認していただいて構いません。」
俺がそういうと国王は大きく頷いた。
「うむ、ソラ殿。それならば此度この国を救ってくれたこと、国王として礼を言う。では黒龍のことや恩賞のことについてはまた別途話すとしよう。………これで謁見は終わりとする。」
そしてこの一言によって今回の謁見は終わった。
そして俺はこの後、黒龍の死体確認のため城内の近衛騎士団の訓練所に向かうこととなった。その途中、エミリア王女に「堂々としていてかっこよかったぞ」と言われた。なんだか褒められているんだろうけど無性に恥ずかしいな。
***
近衛騎士団の訓練所についた俺は早速レイスさんに貰った袋から黒龍の首と胴体など死体を次々と取り出していく。ちなみにこの場には俺、エミリア王女、近衛騎士団、だけでなく国王陛下や大臣、官僚たちも来ている。それだけ神話級は凄いもので価値があるということか。
"ドスンッ"
そう音を立てて黒龍の死体が取り出された。するとこの場に「おぉー」だとか「流石は神話級、死体でも何て威圧感だ」とかいう言葉が流れた。
するとそんな中、先程の宰相かと思われるような人物が俺のもとに近づいてきた。
「初めまして、ソラ殿。私はここハルバート王国の宰相、ニコラス・ド・ロレーヌと申します。早速ですが、ソラ殿の出したこれは神話級の魔物の死体であると確認できました。ですがもう少しの間、確認させてもらえますかな。」
と言われた。随分と人が良さそうな方だな。
「はい、勿論です。」
俺は特に急いでもいないし、断る理由も無かったので、そう言ってエミリア王女とともに査定のようなことを見守っていた。
それから少し経って、ニコラス宰相は国王の元へと戻っていき何やら話していた。そして話が終わったのかまたもやニコラス宰相が俺とエミリア王女の元に来て「もう一度謁見をとり行いますので早急にお越しください。」と言ってきた。またやるのか、まぁもうここまできたら別にいいけどさ。
***
そんなこんなで俺は再び王の間へと来ていた。でもさっきと違って今回は俺一人だ。ちなみにさっきまで一緒にいたエミリア王女は国王の隣に立っていた。まぁ王女様だもんな。
「ソラ殿が提示してくださった死体、間違いなく神話級の黒龍のものだと断定いたします。そしてソラ殿が良ければこれを国で買い取らせていただきたいと思っております。また、此度のソラ殿の功績を称え"黄金双剣勲章"を授与し、褒賞金として王金貨三枚及び名誉男爵位を与えるものといたします。また、この事実は公開することといたします。それではソラ殿前へお願いいたします。」
ニコラス宰相が巻物的なやつを読み上げた。爵位か、それって俺を囲うつもりだよな。まぁいいけどさ、王金貨っていくらくらいだろうか。神話級の価値から考えると一億くらいとかなのだろうか。
うん、まぁ大金だろうってことは分かった。黄金双剣勲章は………まぁかっこいいからいいか。
「はい。」
そう言って俺は国王に近づいて、再び膝をつく。
「ソラ殿此度の活躍、誠にご苦労であった。これからの活躍も期待して止まない。今後も我々と共に国、そして世界を支えてくれることを望む。どうかこれからも尽力してくれ。」
国王がそう言い、俺に王家の紋章が刻まれた黄金の通貨三枚と、胸につけれそうな黄金の剣がクロスした勲章のようなものを渡した。
「はい、ありがたく頂戴いたします。そして、今後も国と民の平和のため、尽力することをここに誓います。」
俺がそう言って再び取り行われた謁見は終わり、今度は黒龍の死体の査定となった。大臣、官僚たちは熱心に黒龍の死体を見ていた。
それからいくら待っても、まだずっと悩んでいたので俺はニコラス宰相に提案してみることにした。
「あのーニコラス宰相さん。この黒龍の死体の査定が難しいのであれば、提案があるのですが………」
俺がそう声をかけるとエミリア王女は驚いたようにこちらを見て、ニコラス宰相はこちらに来た。
「何でしょう?」
「俺は冒険者として活動していて、今後は王都を拠点としたいと思っているのですが、よければですが王都に家が欲しいんです。だから家とこの黒龍で交換というふうにしたらいかがでしょうか?」
俺がそういうと、ニコラス宰相は驚いた表情をして
「そんなことでよいのですか!?この黒龍には計り知れない程の価値があるのですよ」
と言い、これにはエミリア王女も
「ソラ殿、本当によいのか?龍は血の一滴までにも価値があると言われるほどのものなのだぞ。」
まぁそうかもしれないが、きっとこの王国にはこれからもお世話になるだろうし、家の方がほしいし。だから俺は改めてニコラス宰相に
「いいですよ、それでも。これから貴族として王国にはお世話になると思いますし。もしそれでも受け取れないというなら、俺の冒険者ランクアップとかでも嬉しいですので。」
と言った。
「分かりました。ソラ殿は寛大なお方なのですね。それでは国王陛下と話し、提案して参りますので客間にてお待ちください。」
そう言われて俺はエミリア王女とともに王の間から客間へと向かっていった。
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