営業先を訪れ、商品を説明する。
会話も順調。
雰囲気も悪くない。
そんな、ごく普通の仕事の一場面から始まる物語です。
だからこそ、その中でふいに起こる出来事の異様さが、とても強く残りました。
怪談のようでいて、いわゆる幽霊や呪いが前面に出てくるわけではありません。
むしろ怖いのは、
「これ、現実でも起こりそうだな」
と思えてしまうこと。
理由が分からない。
その場にいた主人公にも、何が起きたのか分からない。
だから読んでいるこちらまで、
「え……今の、何だったの?」
と置いていかれる。
この感覚が、とても面白かったです。
何か意味があったのかもしれない。
偶然だったのかもしれない。
あるいは、本人たちにも説明できない事情があったのかもしれない。
けれど、だからこそ、読み終えたあとまで想像が続いていきます。
日常というものは、案外こういう「結局、何だったのか分からない出来事」を抱えたまま過ぎていくものなのかもしれません。
短いお話だからこそ、その一瞬の違和感が鮮烈に残る作品でした。
タイトルの『白目』。
読み始める前と、読み終えたあとでは、きっと少し印象が変わると思います。
ぜひ、この何とも説明しづらい不思議な読後感を、実際に味わってみてください。