05 彼女と一緒に帰る

俺はスーパーで荷物を無事回収すると、立花と一緒に家まで帰っていた。


一定の距離を置かれているのが、まだあんまり信用されてないってことなのかなあ。


まあでも最初よりは確実に信用されてる。


俺の少し右斜め後ろを歩いている立花。


話題がないので二人とも無言だ。


ていうか、どういう口調で話せばいいかわからないんだが。


最初は相手と距離がめちゃくちゃあったため、丁寧語で話していたわけだが、素の俺は丁寧語をよく使うわけじゃない。


だから稀にため口になってしまう。


どう話せばいいか、聞いてみるしかないか。


「た、立花さん」


「はい」


「俺は立花さんと、どういう風に話せばいい?」


「どういう風にとは」


「えーっと、丁寧語とか、ため口とかそういうやつです」


「まあ、話しやすいのでいいんじゃないですか。私は丁寧語が慣れているので丁寧語で話しますけど」


「そ、そうか。じゃあ俺はこれが楽だからこれで」


再び無言になってしまった。


なんか話すことあるかな。あーでもあんまり話したくなさそうだよな。


学校での彼女は、どこか疲れているようにも見えるし。


あっそのことだけ聞いておきたいな。


「なあ立花」


「はい」


「立花って、学校でなんか疲れていないか?」


「そうですか?」


「その、なんだ。学校が終わった後の立花って、元気ないなーって思って」


「まあ、そうですね。私もあまり人と過剰に関わりたくないので。たくさん話しかけられると、こちらも疲れます」


「なるほど」


「あ、あとさ」


「はい」


「立花って、学校の奴らとか、誰にも心許してないよな?」


「そう…ですね。誰にも心を許したことはありません」


「それは親にもか?」


「はい」


あっ地雷踏んだ。


あんまり聞いちゃいけない感じのオーラ全開になってしまった。


なんか言葉にトゲがある感じだし、空気もなんだか凍ってしまった。


せっかく笑顔が見れたのに、元通りじゃないか。


どうしよう…話題を切り替えるしかない!


「そ、そういえば。くまのぬいぐるみ。好きなのか?」


少しだけ空気が元に戻った気がする。


「好きですね」


声にトゲも無くなった。よかったよかった。


「クッキー目当てじゃなくて、くまのぬいぐるみ目当てで買ったのか」


「そうですよ」


「そうか」


また無言になった。


もっと聞きたいことがあるのだが、本人曰くあまり話したくないらしいし、俺はもう話題を振らなかった。



「ではここで失礼します」


ニ十分ほどかけて家まで帰ってきた。


前会った公園の近くで俺の役目は終わったらしい。


「そうか。じゃあ今後気をつけろよ」


「はい」


そう言ってぺこりと頭を下げ、彼女はマンションに向かって歩く。


この辺りマンションが何個もあるからどこに住んでるかわかんないんだよな。


まあ相手も教えたくないっていうことなんだろうけど。


俺は家に帰って、冷蔵庫におにぎりを入れて、服を着替えた。


さーて二時間くらい勉強するかな。


一時間たったくらいだろうか。


外のインターフォンがなった。

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