第45話 目が覚めると
目が覚めたときには、俺は先ほどまで戦っていた訓練場の端で横になっていた。
「あ、目が覚めた?」
そう言ってきたのは芽衣姉ちゃんだった。どうやら看病してくれていたらしい。
「色人ったら、結構重たい一撃もらっちゃったみたいね」
そう言って、芽衣姉ちゃんはペットボトルに入った水を渡してくれた。周りを見てみると、そんなに時間は経ってなさそうだが、既にほかの人たちが訓練に励んでいた。
「ありがとう。でも、なんで芽衣姉ちゃんがここに?」
そう聞くと、
「私って別にやる仕事もないし、一応戦闘職だから、ここで訓練とかを受けてたりしてたのよね。そしたら色人が鷹人さんと戦って気絶してるって聞いたからね。ここで看病してたってわけ」
なるほどな。まあいくら戦闘職だからといって、芽衣姉ちゃんを戦わせるわけにはいかなかったのだろう。これからは徐々にその辺も改善されていくのかもしれない。
「そうなんだ、ありがとう。ということは、芽衣姉ちゃんもこれからは戦闘に参加したりするの?」
そう聞くと、芽衣姉ちゃんは、
「そうね。あたしとしては参加したいと思ってるんだけど、今のところは様子見かな。一応白泉製薬の長女なんだし、今となってはその肩書もどこまで意味があるかってところだけど、なかなかおじさんたちもあたしを戦力としては扱えないでしょう」
「確かに。でも自衛の手段としては必要だしね。すぐには無理でも、何とかなるでしょ。芽衣姉ちゃんはどんな職業なの?」
そう聞くと、芽衣姉ちゃんは自分のステータスを見せてくれた。
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名前:
種族:人族
所属ギルド:【KUROGAMI】/役職:サブリーダー
職業:弓士
ジョブレベル:8
必要経験値:202/240
【ステータス】
|MP:10+(10×0.1×8)=18/18
|攻撃力:7+(7×0.3×8)=24
|耐久力:8+(8×0.3×8)=28
|速度:9+(9×0.2×8)=23
|知力:10+(10×0.1×8)=18
【所持スキル】
弓術 レベル2 【クイックショット 1MP】【マジックショット(無)2MP】
【所持SP】
5,450P
【装備品】
華麗な弓
【その他】
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芽衣姉ちゃんは弓士のジョブで、戦闘に出ていないにしてはかなりレベルも高く、しっかりと訓練をしていたことがうかがえる。
このレベルだったら、その辺の雑魚には後れを取ることはないだろう。しかしホブゴブリンクラスとなると少し心許ない。まあ芽衣姉ちゃんは遠距離戦闘職なので、安全圏から攻撃するだけでも大丈夫だし、すぐにでも戦力となるだろう。
「結構レベルも上がってるし、弓士だったら安全圏からの援護だけでもかなり助かるよ」
そう言うと、芽衣姉ちゃんは少し嬉しそうにしていたが、
「でもまだまだね。正直、止まってる的ならまだしも、動いてる魔物に当てるのは少し難しいと思うし、ましてや仲間が戦ってたら、その仲間に当たる可能性がまだ捨てきれないうちは参加できないわよ」
と言っていた。なるほど、遠距離は強力だが、その分フレンドリーファイアがネックだな。でも遠くの敵にまず攻撃を当てるだけで、近くになったら別の人と交代する分には問題ないと思う。
「そうだね。でもやり方次第では、今の芽衣姉ちゃんでも十分戦力になるよ」
そんなことを話していると、鷹人おじさんがやってきた。
「おっ、目が覚めたか。色人もなかなか強かったぞ」
開口一番にそう言ったおじさんを見てみると、俺が気絶している間も訓練に励んでいたのだろう。頭から汗を流しながら、タオルで拭っている。
「そんなこと言ったって、俺は何にもできずに負けた。正直、手も足も出なかったよ……」
そう言うと、叔父さんは嬉しそうに、
「いや、十分強かった。ただ相性が悪かったな。よけるのが主体の色人の戦闘スタイルは、刀使いとしては戦いやすかった。
逆に、がっちり守りを固めてるような相手は戦いづらいからな。それに似たような戦闘スタイル同士なら、どうしても得物の違いは大きい。
短剣よりも刀のほうがリーチが長いからな。どうしても俺が有利になっちまうよ。でも、最後の刀を受け止めたのはよかったぞ」
そう言ってくれた。そう言われると気持ちが軽くなる。しかし、実力として有利不利以前に俺のほうが劣っていたのは事実だ。まあ今まで何年も刀を振ってきたおじさんに、いくらステータスが高くなってきたとはいえ、一週間かそこらでいい勝負をしようというほうがおこがましいな。
おじさんは警察官だったが、学生のころから剣道を嗜んでおり、何度も全国優勝を果たすほどだった。警察官になった後も、警察内のトーナメントでも負けなしだったらしい。まあ、負けて当然の相手ってことだな。
そんなおじさんのステータスがこれだ。
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名前:
種族:人族
所属ギルド:【KUROGAMI】/役職:サブマスター
職業:【刀神】
ジョブレベル:11
必要経験値:719/1200
【ステータス】
|MP:9+(9×0.9×11)=98/98
|攻撃力:13+(13×1.5×11)=228
|耐久力:8+(8×0.5×11)=52
|速度:10+(10×0.9×11)=109
|知力:10+(10×0.8×11)=98
【所持スキル】
刀術 レベル3 【みねうち 1MP】【切れ味強化 1MP】【属性付与(魔)1MP】
移動術 レベル2 【バックステップ 1MP】【安定性向上 1MP/h】
【所持SP】
14,560P
【装備品】
無骨な刀(高級)
【その他】
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見せてくれたときは驚いた。同じ固有職でも、ここまでレベルに差が出るのかと思ったが、聞く話だとかなりの数の魔物たちが襲ってくるらしく、それらを単騎で蹴散らしていたらしい。
おじさんの話では、おそらく速度だけで言ったら現状俺が最速らしい。本当にその点、戦いづらかったと言ってくれた。
おじさんの武器は、特に何の効果も持たない無骨な武器シリーズの「無骨な刀(高級)」らしい。とにかく頑丈で使いやすいようだ。武器も刀ならこだわりのないところも【刀神】の所以なのかもしれない。より強力な刀を使えば、まだまだ強くなると思う。
その後、少し休憩をはさんだ俺は、叔父さんに今度は戦闘形式ではなく、普通の稽古をつけてもらいながら、ほかの警備隊の人たちとの親睦を深めた。
警備隊の人たちは、俺が父さんの息子だからか、叔父さんの甥っ子だからか、最初のうちはどこか距離があったが、一緒におじさんに吹き飛ばされていくうちに、徐々に距離がなくなっていき、かなり打ち解けることができた。
やはりおじさんは訓練のときに【みねうち】を多用していて、あれを食らうと命を落とすことはないのだが、かなり痛いのだ。
そんな不思議な絆で結ばれた俺たちは、そのままお昼ごろまで訓練をし、昼食を一緒に食べた。
午後は、実際に警備隊に参加して、周辺の警備と魔物の討伐に向かう予定だ。
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