男子校に入学したはずなのに、文化祭の出し物が○○な件

「え、えっと、皆さん、文化祭の季節が近づいてまいりました。クラスでの出し物は必須ではありませんが、慣例的に一年生は全クラスやることになっています。何をやるか、決めておいてほしいです。」


 HRでそんな通達があったのは、セレスの件が解決してから一週間ぐらいたち、二学期が板についてきたころ合いだった。


 とはいっても、俺は基本的にクラスに顔を出していること自体が少ないから、そこまで活躍の場はないだろう。


 一応、部活の時に先輩たちに何をやったか聞いてみよう。


 そんなことを考えながら部活に行くと、先輩たちもちょうど文化祭の話をしていた。


「わたしらも部活で出場するからねー、覚悟しておいてよー?」


 とヒカル先輩。というのも、ウチの学校では三年が最後に出られるのがここらしい。他の学校では夏休みで終わりなところをおととしの先輩でわがままを言った人がいるんだとか。


「でも、そんなことを認められているのはチア部だけだけどね。」


 ボーイッシュ先輩が苦笑しているところを見るに、例の「迷惑な先輩」がごねたのかもしれない。


「それで、曲は?」


「もちろんもう決まっているよ!シュガーには思い出のあの曲!」


 と、ほぼ初めてで大会に出させられた懐かしい曲を流してきた。


「ウチのチームの定番曲といっても差し支えないからな、これは。」


「そういえば、一年のころのクラスの出し物って何やりました?」


「私のクラスはクレープ屋さんだよー!」


「こっちは喫茶店だったかな。」


 ふむふむ、いろんな店があったんだなぁ。


「まあ、クラスのみんなに任せてれば何となく決まるよ!さ、練習練習!」


 そういえばこの人、チア以外についてはどうしようもないほど頭悪い人だったっけ。人のこといえないけど。






「それでは、クラスの出し物はメイド喫茶に決定しました。」


 気が付くと、眼鏡におさげの学級委員長が黒板の「メイド喫茶」に丸をつけていた。しかも赤チョークで。グリグリと。


「えっ、いや、ちょっ、まっ!」


 俺が何か言おうとすると、アオイがニヤついて、


「よろしくお願いします、先輩!」


 と耳打ちしてきた。ヒカル先輩の嘘つき……。どうにかなるって言ったのに。


「ちなみに、経験者の方はいますか?メイド喫茶なんで、さすがにいないと思いますけど……。」


 クラスのみんながこちらを見る。いやまて、なんで俺の秘密を知っている。実は男ってのも周知の事実だったりするの?これぞほんとに羞恥の事実なんだが。


「もしかして佐藤さんできるんですか?」


「いや、まぁ、少しだけ……。」


 すると、委員長はユウキに目配せした。


「そんなこと言わないでカヅキ。あなたのメイド服姿、とても堂々としていたわよ。」


 クラスがみんな、うんうんと頷く。気が付いていないうちに盗撮とかされていたのだろうか。怖すぎる。


「では、指導役のまとめは浦和ユウキさん、衣装、経理等は田中アオイさん、よろしくお願いしますね。」


 最初から完全に仕組まれていたのか……。






「ということで、今回はメイド指導がなされるそうです。特別講師の方々を各方面からお呼びしています。拍手でお迎えください!」


 あれから一週間。ロングホームルームでクラスに呼ばれたのは、まるで誰かが仕組んだかのようなメンツだった。


「浦和家メイド、ユリアさん!」


 久しぶりの登場なユリアさんが入ってくる。


「メイド喫茶のプロ!アヤカさん!」


 なんでこの人がいるんだよ。とりあえず顔だけでも隠しとこう。タオルで顔をグルグル巻きにして。


「そして最後に!」


 まだいるのか。


「客役の手本、セレスさん!」


 異世界人呼んじゃったよ。


「なんか一人気持ち悪いのがいますわよ。」


 たぶん、頭にタオル巻いてる俺のことだろう。


「スンスン、あれは匂い的にカヅキたん!最近不足気味だよー、デュフッ。」


 アヤカさんは早速鼻血出してるし。


「校内放送、校内放送、お車でお越しのユリアさん、至急、駐車場までお越しください。」


 そういえばこの人、乗り物の運転だけはできないんだっけ。なぜ車で来ようという発想に至った。


「まずは形から。メイド服の支度をなさい。5秒待ちますわ。」


 ガチお姫様のセレスさんにみんなドン引いてるし。


「と、とりあえず、カヅキのお手本からお願いしようかしら。」


 いくら俺でもこの高慢系女子に仕えるほど心が広くない。なんかやらかしたら光魔法で消し飛ばされそうだし。


 絶体絶命の俺に、救いの手を差し伸べてくれたのは、意外な人物だった。


「最近お姉さまが不足しておりますわぁ!ロングホームルームなんて放っておいて、ワタクシの手料理のお時間ですのぉ!」


 人格崩壊、戦々狂々、文字通り怪刀で乱魔を断つような自称俺の妹分、レイナだ。ちなみに漢字の間違いはない。


「私が不足って、アヤカさんも言っていたけど、私からは何も摂取させていないつもりよ?」


 クラスの人の前なので、抱き着かれてもボコボコにはできない。だが、その奉仕姿が委員長の心の何かに響いたようだ。


「あなた……メイドの何たるかを教えてくださらないッ!?」


 にしても、よくこんなキャラ濃いのが今まで出てこなかったな……。


「それがお姉さまのためになるなら、もちろんですわぁ!」


 あーよかった。


「なるなる。めっちゃなるからあと全部よろしく。」


「じゃあ、みんなで練習、始めるわよー!」


「「おーっ!」」


 ユウキの音頭でみんながこぶしを上げ、作業に取り掛かった。


「あ、あの……。」


 ようやく解放された俺が端っこで休んでいると、マンボウメンタル一ノ瀬先生が声をかけてきた。


「どうされました?」


「今日のホームルーム、文化祭より先にやる体育祭についてやるはずだったんですけど。」


 ほんと、ウチの親友と自称妹がすみません。


「で、でも、やることは決まっているんで、あとは何をやりたいかだけ決めるだけなんで……。」


「じゃあ、あとであいつらに声かけときますね。ユウキの奴も悪乗りがちょっとすぎるようなので叱っておきます。」


「ほ、本当に……!お手数おかけしてすみません。」


 いえいえ、こちらこそ本当にすみません……というのは口に出すとすみません合戦になるから心の中で言っておく。


「それと、もう一つ……。」


 先生が何かを付け加えたそうにしている。


「ウチの学校は、一応バイトには申請が必要で、かつ、高校生にふさわしくないと思われるものは却下させていただいてます。その件で、お話を伺いたいのですが……。」


「これってもしかして、ヤバい奴ですかね?」


「かつて、店の方にも年齢詐称してバーで働いていた子が退学になったとかなっていないとか……。」


 あーこれ、ヤバい奴というよりがっつりヤバい奴だ。

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