男子校に入学したはずなのに、夏休みの最後に地獄が待っていた件:解決編

「それで、どういうことだ、カオリ?」


 待ちに待ちかねたアオイがカオリに尋ねた。


「まず一つ。カヅキは大馬鹿である。」


「そうだね。」


「そうだぜ。」


「なあ、アオイもロックのおじさんも少しは擁護してくれよ。」


「擁護の余地ないだろ?男子校だと思って女子校に通っていたんだし。」


「そ、それは……アオイだって見抜けなかったじゃないか。」


「あれはお前が美人すぎるのが悪い。」


 これは褒めているのだろうか、貶しているのだろうか。


「ウオッホン!」


 いつの間にかいかにも名探偵感あふれる帽子とパイプを加えたカオリが咳ばらいをする。パイプの中にはアロマオイルを垂らした脱脂綿を入れ、呼吸で匂いがするアロマポッドにしているようだ。


 こいつ実は頭いいのかな。


「それでは、なぜカヅキはどこからどう見ても100%火を見るより明らかにどうしようもないこの世の中でもトップクラスの、大馬鹿なのに、すべて正解を書けたか?」


 こいつの今日の夕飯に懐かしのRTXを入れてやろう。今のところユウキしか食えない超激辛素材である。


「それは、曲だ。」


「曲!?」


「お、俺のか?」


「そうだ。普段のロックのおじさんの曲はひどすぎてとてもじゃないが聞けたもんじゃない。そうだろ?」


 俺とアオイは全力で頷く。というかカオリ、お前いつか刺されるぞ。


「そしてそれを聞いていたはずなのに、カヅキは吐くどころか勉強が進んだ。」


 俺は一応頷くが……ロックのおじさん涙目だぞ。そろそろやめてやれよ。


「さあおじさん、曲の楽譜を見せてくれ。」


「お、俺の楽譜を見たいのか!?いいぞ、たーんと見ろ!」


 この人はこの人でチョロいな。


「そして、こんなところに住んでいるからには、ロックのおじさんは五線譜ノートを買うお金もないほど貧乏。この紙は……。」


「ま、まさか!」


 アオイが何かに気が付いた表情をする。俺もこれ以上バカだと思われたくないから同じ表情をした。


「気が付いたな。カヅキ。言ってみろ。」


「わかりません。」


「はい、バカ乙。アオイ。」


「その紙は、模解のプリント!?」


 なるほど、これですべて謎が解けた。俺は気が付かないうちに模解をチラ見していたのか。


「まさか、歌詞を当てたつもりがないのにこの歌に歌詞があるのは、俺が模解をうたっていたのか!?」


 そ、そうそう。知っていたし。


「でも、なぜカオリはそれに気が付いた?」


 アオイがバシバシ話を進めていく。


「簡単なことさ。授業で訂正された模解の間違いと、まったく同じ間違いをしていたからな。」


 本当に簡単なことだった。


「カヅキ、もちろん……。」


「はい、先生に謝ります。」


「なんか違う気がするがまあ良しとしよう。」


 こうして俺は、無事に廊下に立たされた。


 ……今回の尺が足りないじゃねえか。

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