幕間2-③

 それから数日が経ったある日の放課後。


 校門の前で、日聖が男子と一緒に歩いているのを見かけた。


 思わず立ちすくんで、自分の目を疑った。


 それは、日聖が他の男と歩いていたからではない。



 



 隣を過ぎ去っていく学生たちの足取りがひどく遅く感じられ、自分だけが別の空間に切り離されたような錯覚を受けた。


 何かの冗談であってくれ。


 そう願わずにはいられなかった。


 俺の存在に気づいたのか、日聖がこちらに目を向けた。

 

 まるで当てつけのように、彼女は小さく口角を上げて長嶋の肩に抱きついた。



 すると、長嶋が笑って日聖に唇を寄せ、無抵抗にそれを受け入れた。



 俺は、固まったようにその場に立ち尽くし、ようやく悟った。


 単純な話だ。


 俺の存在はいつからか彼女にとって、重荷でしかなくなっていたのだ。


 ……実に傑作じゃないか。


 日聖は、いつまでもお荷物である俺を捨てきれなかった。


 あの決別の日まで、ずっと彼女の好意を身勝手に利用し続けていた。


 日聖に好かれるどころか、俺はいつからか彼女に恨まれてさえいたわけだ。


 しかも、こんな形で仇討ちをするほどに、福島永輔は彼女にとって許しがたい存在らしい。


 生を受けてからこれまで一番美しく、価値があると思われた記憶の数々は、その時から一番忌まわしい記憶へと変貌した。


 まるでアヒルとウサギの判じ絵のように、その見え方は一瞬で切り替わったのだ。



 その日の晩、俺は布団に顔を埋めてひたすら泣いた。


 嗚咽の声が部屋の外に漏れるのも気にせず、みっともなく泣きじゃくった。



 気づけば手元には、もう何も残されていない。


 俺は、いよいよの無一物だった。

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