賢者とお姫様、エルフとの話し合いをする

「お父様、エルフの国には私が言って参ります」

 俺達はノアさんの作戦を実行する為に皇帝陛下に謁見していた。

「うむ、お前が1番適任だろう。近衛とそこのエルフを連れて行くが良い」


「お父様には流石にバレバレでしたね」

 謁見を終えたノアさんはそんなことを呟く。

「それでノアさん作戦って何をするんですか?」

「行けばわかりますよ」

 ニコッと微笑むノアさんに底知れぬ恐怖を感じた。 


 エルフの森の国境付近まで俺達は馬車を進める。

「お前達!何者だ!」

 エルフの男がこちらに弓を向けながら素性を聞いてくる。エルフを攫うというのは未だに多いと聞く。その対策だろう。

「私は帝国の皇位継承第3位ノア•アカリア•アーデストです!」

「帝国?そういえばハイエルフ様を連れてくるとかいう話を聞いたな。通れ」

「ありがとうございます。ついでに族長様にお目通り願えますか?」

「いいだろう。ただし小娘もそこの男も余計なことはするなよ」

「それは重々承知しておりますよ」


「もしかしてノア様ですかい......?」

 エルフの族長がノアさんにそう声をかける。

「ノアさん作戦ってこういうことですか?」

「ええ。私とエルフの族長様は顔見知りなんですよね」

「様などと仰々しい呼び方はおやめください。元々ノア様に宿る精霊は我々エルフにとっては信仰の対象なんですから」

 ポカンとしている俺とエルにノアさんが説明をしてくれる。


「つまりですね。私の生まれ持った精霊の義眼、これに宿っている精霊がエルフ族の信仰している精霊と同じなんです」

 エルフは精霊信仰をしている。そしてノアさんの生まれ持った精霊と偶々信仰していた精霊が合致していたということか。

「国境付近にいたエルフの人はノアさんのこと知らなそうでしたけど」

「ああすまんね。あいつは生まれてから若いんだ許してやってくれ。でノア様その子がハイエルフ様ですか?」

「はいそうですね。ただこの子は私達との生活を望んでいます。どうにかなりませんか?」

「精霊様を宿しておられるノア様に言われると弱いのですがそれを決めるのはハイエルフの女王様でありますので......」 

「はぁわかりました。私あの人は苦手なのでできれば会わずに帰りたかったのですが致し方ありませんね」

「女王様もノア様が久しぶりにお見えになられたのでおそらく御喜びになると思いますよ」

 薄々気づいてはいたけどノアさんは人脈もすごいみたいだ。


「ノア!久しぶりじゃの!」

 謁見の間に足を踏み入れた瞬間、小柄なエルフがノアさんに抱きつく。

「ミレイア様変わりませんね」

 小さいエルフの子を抱き上げるノアさん。

「むーノアはいつまでも私を子供扱いするのぅ......」

「だってずっと小さくて可愛いじゃないですか」

「可愛いって言ってもらえるのは嬉しいのじゃがもうちょっと大人の扱いをしてくれ。威厳がないじゃろ」

「その話は後でゆっくりするとして。エルさんを連れてきましたよ」

「その子がエルか」

 エルがペコリとお辞儀をする。


「そうです。どこかの女王様が短気なせいで師匠と離れ離れにされそうになっている可哀想なエルフさんです」

「その言い方はないじゃろ!そもそもお主が帝国におるのを知っておったらわしはあんなこと言わんかったわい!」

「そこら辺は帝国のトップシークレットですからね」

「そんなことは知らんわ......。してその男がエルとやらの師匠か?」

 ようやく興味を持ってもらえたらしい俺は自己紹介をする。

「はい。マギと申します」

「マギ、マギ、マギ。あーお主もしかして元勇者パーティーの賢者だったりするか?」

「よくわかりましたね」

「まあわしとて噂ぐらいは聞いとるからな。今は色々と苦労しておるみたいだが」

「そうなんですね。正直ノアさんに拾ってもらった時点で元のパーティーには興味はありませんし苦労してようと俺には関係ありません」

「ノアお主いい拾い物をしたのぉ」

 ニヤニヤとノアさんをみるミレイユ様。


「そういう言い方はやめてください。でエルさんはこちらで保護しておいていいんですか?」

「お主ならいいじゃろう。またマギと何か進展があったら報告に来るんじゃぞ」

「私は別に......」

「別になんじゃ?聞こえんぞー?」

「もう帰ります!」

 珍しくノアさんが負けた。仕え始めて初めて見るかも知れない。

 顔が赤いノアさんが謁見の間を出て行く。


 俺もそれについて行こうとするとミレイユ様に止められる。

「ノアをどうかよろしく頼むぞ。あやつはああ見えて結構無茶をするからの」

 俺は初めに出会った時の光景を思い出す。確かに結構な無茶をする人だな。

「わかりました。任せてください!必ずノアさんが無茶している時は俺が責任を持って止めます」

「うむ、それで良い!」

 こうしてノアさんのおかげで戦争を起こさずにエルとも離れ離れにならずに済んだ。また何かノアさんには俺とエルでお礼をしないとな。

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