Lonely girl

第1話「Lonely girl」


「それじゃあ、今週もちゃんとお薬飲んでね」



毎週聞く女性医師の声で、記憶に残っているのはそれだけだった。


私は生まれつき身体が良くないらしい。


周りの大人は、そんな私を過保護に育ててきた。


保育園や幼稚園にも行かず、小学校も保健室に登校しては、そこで個人授業をするという有様だ。


故に、私に同世代の友達などできなかった。


それでも、私の周りには優しい大人たちがいる。


だから、友達がいなくても別に構わないと思っていた。


そんな意思を持って数年。ここ最近は学校に行く回数が増え、休み時間になっては、保健室の窓から見える、元気に遊んでいる同じ児童たちを眺めていた。



「どうしたの?」



そう、先生が問いかけることもしばしばあった。


その問いに、



「遊びたい・・・」



そう口にしたことがある。


私の発言に先生は「身体が弱いんだから」と言い、私を窓から遠ざける。


そんなに私をみんなから隔離したいのだろうか。


時間が経つにつれ、私は大人たちに疑心暗鬼の心を持つようになっていった。


身体が弱いことを良いことに、都合よく利用しているのではないか・・・と。


それから小学校を卒業するころには、「友達がほしい」と思うようになっており、親に頼み込んで、中学はちゃんと教室で授業を受けることになった。



「私にも、友達ができるかも」



そんな淡い期待を寄せて中学生活に挑んでみたが、そう うまくいくものではなかった。


まず、私と同い年の人たちは、小学校というところで六年間に渡り社会性を身につけている。


対して私はどうだろうか。


社会性とは、机に向かって勉強すれば身につくものではない。

人と話し、接し方を学び、言葉遣いを学び・・・社交性とも呼べるそれだ。


彼ら彼女らは、『実践』を、知らずとも豊富に行なっている。


私はもちろん、そんな経験はほとんどない。


結果、私には友達ができなかった。


クラスで誰とも話さない、浮いた女子。


何度か話しかけようと試みたこともあったが、私の方の勇気が足らなかった。


入学から一ヶ月も経つと、私は退屈な休み時間を利用して、家から持ってきた本を読み始めた。


これまで読書とは無縁の生活をしていたが、本というのは魔法みたいなもので、これが妙に私のツボにハマってしまった。


それから来る日も来る日も読書をして、気づけば中学三年生になっていた。

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