第7話

沙耶の誕生祝いに、春輝たちは下校途中、ペアネックレスを買いに行くことにした。

隣町のショッピングモールに向って歩く。

「わたし嬉しい。ペアネックレスとか、そういうの憧れだった」

「いいの見つかるといいね。俺も初めてのことで嬉しいよ」

春樹はこれまで女の子と付き合ったこともなく、沙耶と仲良くできていることをすごく幸せに思っていた。

「わたし、けっこう引っ込み思案なところがあって、友達も今まであまりできなかったし、春輝の友達と仲良くなれたこともすごく嬉しいの」

「うん。みんないいやつだし、沙耶が仲良くしてくれて俺も嬉しいよ」


ショッピングモールに着いて、アクセサリーショップを見つけ、これどうだろう、こっちはどうかな、などと相談してわりとシンプルなデザインのものを買うことにした。

それから喫茶店に入り、ネックレスをお互いの首につけた。

「すごく似合ってる」

春輝が言うと、沙耶はにっこり微笑んだ。


外に出ると日が暮れかかっていて、短い夏の夕焼けが街をオレンジに染めていた。


しばらく歩き、市街地を抜けて人通りの少なくなった角を曲がると、顔をマスクやサングラスで覆ったいかにも怪しげな男の姿があった。

「なんだろあの人」

春輝が独り言のように呟いた直後、男がふたりに気づき、駆け寄ってきた。

右手にナイフが握られているのが見えて、春輝は咄嗟に沙耶を背に前に出た。

「春輝!」

沙耶が短く叫ぶ。

男がナイフを振り上げ、春輝は何もできず顔に振り下ろされたナイフから右手をあげて顔を庇った。


男はさらに攻撃を加えてくるかと思ったが、春輝にナイフを振り下ろすと、踵を返して走り去った。

「痛っ…」

破れた制服の下の右腕からは血が滴り、春輝はうずくまった。

沙耶が彼の肩にしがみつき、その後うずくまった春輝の顔を覗き込んで、恐怖に震える表情で目には涙を浮かべていた。

春輝は沙耶を少しでも安心させようと弱々しく笑みを見せて彼女に、「沙耶、大丈夫?」と訊いた。

沙耶は何度もうなずき、彼の肩にしがみついた。

「あんた、大丈夫か?いま救急車を呼ぶから!」

犬を散歩させていた中年の男性が駆け寄り、携帯電話で救急車を要請してくれた。

「俺は大丈夫だから、腕を少し怪我しただけだよ」

沙耶は左手で溢れる涙を拭いながら頷いた。

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