第7話 第一王子との再会
「リア?」
王城の長い廊下を歩いていると後ろから誰かに名前を呼ばれる。どこか聞き覚えのあるその声に振り返るとそこには予想外の人物が立っていた。
「ウィルフリード様」
ウィルフリード・フォン・グリモワール。
婚約者様の二歳上のお兄様でこの国の第一王子。つまりは王太子殿下だ。第二王子とは正反対な人物で品行方正、文武両道、真面目な好青年で皆に慕われている存在。
そして私の幼馴染でもある彼は一年前から隣国に留学に行っていたはず。それも私の兄と一緒に。
どうしてここにいるのかしら。
「久しぶりだね、リア」
「お久しぶりです、ウィルフリード様。いつ留学から戻っていらっしゃったのですか?」
疑問に思っていたことを尋ねると「ああ」と明るい表情を向けられる。
「帰ってきたのは昨日の夜だよ」
「そうだったのですか、教えてくだされば良かったのに」
「あれ?帰ってくる前に手紙を書いたんだけど届いてない?」
そういえば数日前に手紙をもらっていたような。最近色々と忙しくしていたせいで確認を怠っていたみたいだ。
「もしかして見てないだけ?」
「はい…。申し訳ありません」
「別に良いよ。リアの事だから忙しくて確認出来ていなかっただけだろうし」
流石は幼馴染。私のことをよく分かっている。
苦笑いのまま頷くと「やっぱりね」と笑われてしまうので改めて謝罪をする。
「お兄様はご一緒ではないのですね」
「僕だけ先に帰ってきたんだ。あいつはまだ向こうで学びたい事があるみたいだからね、置いてきたよ」
「そうだったのですね」
私の兄は好奇心旺盛な性格をしている。父の跡を継いだら自由が少なくなると知っているから学生のうちに好きに学びたいのだろう。
でも良かったわ。お兄様が今回の件を知ったら更に厄介なことになりそうだもの。
「暇しているならお茶でもどうかな?」
相変わらず気さくな性格をしている。ウィルフリード様は昔から私を妹のように可愛がってくれているから第二の兄のような存在だ。せっかく義理の兄妹になれそうだったのに駄目になってしまった。あのお馬鹿様のせいで。
「ウィルフリード様、帰ってきたばかりでお忙しいのでは?」
「大丈夫。それより昔みたいにウィルと呼んでよ」
ウィル。
それは小さい頃に呼んでいたウィルフリード様の愛称だ。数年前、彼が正式に王太子になってからは呼ぶこともなくなった。気軽に呼んで良いのか分からなくなってしまったから。
「呼びたくない?」
「そうですね、出来ることならウィルフリード様と呼びたいと思っております」
「リアは変なところで頑固だからな。今は諦めるしかないかな」
頑固なのかしら。ウィルフリード様が言うならそうなのかもしれない。
「とりあえずお茶にしよう?お互いに溜まっている話をしたいから」
「ご迷惑にならなければご一緒したいです」
「迷惑と思っていたら誘っていないよ」
「それもそうですね…」
変なリアと笑われてしまった。
近況を話すということは当然婚約破棄の話もしないといけないからちょっとだけ憂鬱な気分になる。
「じゃあ、行こうか」
「はい、ウィルフリード様」
一年前と変わらず丁寧なエスコートに身を任せた。
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