セミを追尾

 青葉あおあおしげる頃。

 木陰もすっかり大きくなって、木々の幹にはジージーと、夏の鳴き声、蝉の声。


 うだる暑さに辟易しながら、ふいに視界を横切った、蛇行飛行のおかしなカラス。

 なんだ、なんだと目を凝らし、変なカラスを追ったなら、どうやらカラスの視線の先に、変な飛び方その元凶が、必死のパッチで逃げている。


 よくよく見たら一匹の、茶色い羽のアブラゼミ。

 よたよたしながら必死に羽ばたき、カラスの追尾をかわしてる。


 そもそもセミに言えるのは、飛ぶのがとにかくド下手くそ。

 だけど、下手くそ飛行のおかげで、カラスが目標定められずに、蛇行飛行で追いかける。

 下手くそ飛行は生きる知恵。

 わざとよろけて追尾をかわす、虫たちなりの生きる知恵。


 壁よけ、木々よけ、フェンスよけ、電柱回避でよったよた。

 器用な蛇行飛行を披露し、しつこいくらいにセミを追う。


 おそらく数分追い続け、疲れた哀れなアブラゼミ。

 最終的にはがっしりと、黒々くちばし咥えられ、ジージーばたばた音を立て、だけどそのまま捕まった。哀れ、そのまま捕まった。


 捕獲完了、カラスも安堵し、平常飛行に切り替えて、近くの屋上目指しつつ、おやつをゲットで満足げ。

 自然界では貴重なタンパク。セミはカラスの好物と、この時初めて知ったんだ。



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 鳩やトンビを追いかけ回しているカラスは見たことありますが、セミを追いかけ回すカラスは初めて見ました。

 すごいアクロバティックで、すごく変な飛び方をする手動追尾システムが搭載されているようです。

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