第6話 まあばあちゃんのがまん

隣町のフリーマーケットに行くまあばあちゃんの後ろ姿をジロは2階に上がってずっと見ていました。


ゆっくり、ゆっくりと、まあばあちゃんはシルバーカーを押していきます。天気も上々、春の柔らかな日差しがまあばあちゃんを包んでいます。


隣町のフリーマーケットは前に行った公民館よりもっと賑やかです。


チリンチリン!


すぐ後ろで自転車のベルの音が聞こえました。まあばあちゃんのシルバーカーすれすれに通り過ぎました。ドキッとしましたが、ぶつからずにすみました。

ホッとしていたところを、今度は自転車がベルも鳴らさずに目の前を通り過ぎます。


(とんでもないところに来てしまった)


まあばあちゃんは人の往来の激しさに驚きました。ここからもう帰ろう……だけど、体がこわばって、シルバーカーを家の方向に回せません。


「邪魔になるなあ! ええ年寄りが家にひっこんどれ!」


小さな体のまあばあちゃんに、男の人が大声を浴びせかけました。


「ほんまや! 安いモンがあると思って、のこのこ年甲斐もなく出てきたんやろ」


女の人にも怒鳴られました。


まあばあちゃんは来たことを後悔しました。悲しくてつらくて、胸が締め付けられるようでした。涙がいっぱい出てきました。まあばあちゃんは若い時から人の倍働いてきました。でも今は、年を重ねて体も思うように動きません。


(わたしのような年寄りが欲を出したからね。若い人の迷惑になるのに……。こんな遠くまで来て、それこそ、あの人たちの言うように、のこのこ出かけてきて…)


まあばあちゃんは年を取った自分をこんなに責めたことはありませんでした。


まあばあちゃんは大好きなフリーマケットがすぐそこに見えているのに、なんとかシルバーカーを家の方向に向けると、おずおずと歩きだしました。

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