第21話 合格発表

 三月十二日

 この中学三年間、俺は無難に生きてきた。

 内申書に、素行の問題はない。

 後は、受験で取った点だけのはずだ。

 今日は、公立高校の合格発表日。

 中学生にとっては、人生でかなり大きな分岐点の一つになる。


 勿論、俺とて、私立高校は受験している。

 今回受けた公立高校と、同じくらいのレベルの私立高校を受けた。

 そして俺は受っている。

 ならば、受かるはずだ。

 よほどの凡ミスをしていない限り。

 横には、あゆたんが心配そうに立っていた。

 そして、その横には三橋の姿もある。


(あいつも受けてたんだ。だけど、モテ男の中では、いい奴だ)


 だからと言って、三橋が受かって俺が落ちるのは嫌だ。

 勇気をだせ、和樹。

 番号を見るのだ。

 俺の番号は、六十九。もう一つで七十番台だったな、七ってあがる数字なのに。

 つまらない事を頭の中で考えつつ、番号を目で追っていく。

 六十、六十三、うお、六十八、飛んだな、次、お願いします。


「六十九、あった。」

 感無量とはこの事だ。拳をぐっと握る。

 あゆたん、あゆたんは、目で追うも、先ほどからいたあゆたんがいない。


 もしかして、もしかして、俺が受かっても、あゆたんがいない高校生活なんて考えられない。

 どうしよう、落ち込んで、どこかで泣いていたら?

 必死で可愛い、あゆたんの姿を追う。

が、見当たらない。

 どうしよう、落ちていたら。

 自分が落ちる場合は想定していたが、あゆたんが落ちる想定はしていない。


(あゆたんの番号、聞いておけば良かった)


 その時、ラインが鳴った。

 あゆたんからだ。

『和樹―、おめでとう、受かってたね。私も受かったよ。友達と学校一緒に行くから、後で会おう。じゃあね』


(良かった、あゆたん、受かったんだ。これで、俺の高校生活はバラ色だ)


 もう一度、拳を握る。

 ただ、あゆたんと合格のハグをしたかった。

 ラインで母親と、夏目、設楽にも合格の通知をした。すぐさま、母親からおめでとうの返信がきた。夏目と設楽もガッツポーズのスタンプが返ってきたので、合格したのだろう。


 さて、学校に行きますか。

 今日は、もう一つイベントがある。

 二月十四日、バレンタインイベントの結果発表。

 受験は終わった、後は天国か罰ゲームである。

 そして、三年生全員が合格していますように、出なければ、せっかくのイベントも盛り上がりにかけてしまう。

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