やってきた修学旅行とテンプレ?

「満天の青空!」

「青い海!」

『『沖縄だぁぁぁあああ!!!』』


 大声を上げて燥ぐ亮平と鈴原さん。驚いた周りの人の視線が一気に集中する。恥ずかしいから止めて…………。


 もう二人が言ってしまったが、俺たちは修学旅行先の沖縄にやってきた。


 今は長い空の旅を終えて、空港の外にいる。

 これから、三日間お世話になるホテルにバスで向かう。



 俺たちはバスに乗る。

 バスの席順は班ごとに別れており、俺の隣には悟がいる。


 あの一件から、柊さんとはあんまり話せていない。と言うか、避けられている。


 花月の事を思ってくれて、家には来てくれるんだ。

 だけど、顔を合わせれば背けられたり、話しかければ逃げるように、『あ!』とか『そういえば!』とか言って、何処かに消えてしまう。

 まあ、嫌われるのは当然ちゃ当然だけど……。


 向こう側の席にいる柊さんを見る。すると、柊さんと目が合ったが、直ぐに逸らされてしまう。

 自分が悪いけど、結構、メンタルにくるな……。



「ましろ、柊と何かあったのか?」

「まあ、ちょっとね……」

「何があったかは知らんが、柊もいつまでも待ってくれる訳じゃないからな?」

「…………分かってる」

「ならいいが」


 俺の言葉を聞いて納得したのか、悟は窓に顔を向けた。



 バスがホテルに着く。

 まずは部屋に行って、荷物を置いてくる。


 部屋は他の班と一緒になり、六人部屋となっている。あ、一応言っとくと、男女別部屋だ。


「おっすー!よろしくなー!」

「おう! よろしくな!」


一緒の部屋になる人達に挨拶を交わしてから、部屋に入っていく。


 壁紙とかも特に拘ったてる所はなく、全体的に白一色の部屋。左右に三つシングルベットがあり、一つだけクローゼットが置いてあった。ベランダがある。なんとも味っけのない部屋だが、俺はわりと好きだ。


 荷物を置いたら、下のロビーに向かう。


 下のロビーに来ると、既に何人かの生徒がいた。少し辺りを見回すと、柊さん達の姿があった。

 あっちも俺達に気づいたのか、こっちに来てくれた。


「おっそーい!」

「いや、お前らがはやいんだよ…」


そんな会話をしながらハイタッチをする亮平と鈴原さん。

 今さらだけど、あの二人って付き合ってるのかな?かなり距離が近い気がする。あとで、悟にでも聞いてみよ。


「ねえ、白上くん。ちょっといい?」

「ん、どうかした?」


相沢さんに呼ばれ、ちょっと皆から離れた所に移動する。

 相沢さんが、俺に用事って珍しいな。なんだろう?



「ねえ、ひーちゃんと何かあった?」

「!!」

「あーやっぱり。ここ最近、ひーちゃんとよそよそしいからさ」

「……」

「話したくないなら、無理には訊かないけど。ひーちゃんも話してくれなくてね」


 心配そうな顔をする相沢さん。柊さんが本当に心配なんだろう。でも、柊さんが話してないって事は話さない方がいいんだろう。


「実は───」


 俺は、相沢さんに全部話した。話をしてないなら話さない方がいいんだろうけど、柊さんを心配しているなら、教えた方がいいと思って教えた。





「──え、何でそこまで行って、告らないの?」

「ごもっともです……」


 首を傾げて、さぞかし不思議そうに首を傾げられた。


「でも、よかった。そういう事だったんだね」


 話を聞けて安心したのか、ほっと胸を撫で下ろす相沢さん。


「おーい! 2人共行くよー!」

「あ、分かったー!今行く! ほら、行こ、白上くん」

「うん」


そう言って、皆の所に行く相沢さん。俺はその後を追った。


◇◇◇◇


「んーー! 疲れた」


 今日一日動いて疲れた身体を伸ばす。

 平和学習が終わり、夕食も食べ終えて、今は部屋にいる。


「今日は疲れたけど、明日はいよいよだもんな!」

「女子のレベル高いから、お前らはいいよなあー」

「へっへっへ!羨ましいだろ!」

「くそぉ! ムカつく!!」


 羨ましそうに言ってくる一緒の部屋になった、花山くんを煽るようにドヤっ顔をする亮平。

 でも、喧嘩はする事はなく、楽しそうにしている。


「そうだ、この後さ、ここに他の奴らも来て話す事になったんだけど、白上、大丈夫か?」

「俺は平気だよ」

「お、まじか。てっきり、就寝時間を守れとか言われると思ってたぜ」


 花山くんがそう言うと、他の皆も頷いた。

 俺って、皆の中でどんなキャラなの……?空気ぐらいは読むよ?


「それじゃあ、まずは風呂だな!」

「そうだな!」

「なあ、知ってるか? 入浴時間って女子と一緒らしいぞ?」

「ほほう、詳しく聞こうか」


何やら、悪い顔をして話し合う皆。俺と悟は少し離れた場所から眺めているだけ。

 だいたい想像つくけど、痛い目見る前に止めときなよ?

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