伊勢界、悠者になり、悠者、伊勢界に飛ぶ(異世界ファンタジー?)

………こうして、悠真は無事に現代に帰ったのであった。

自分の名前を当てはめて読んでみる。かっけー。異世界転生。俺も転生してーな。

「母ちゃん、俺異世界に転生してくるわ。」

もちろん無理なことはわかっている。ちょっと母親がどんな反応するのか確かめてみた。案の定母親は、は?という顔でこちらを睨み付けるだけだった。なんだよ、ノってくれてもいいのに。釣れねえなあ。


俺は部屋に戻り、もう一度本を開く。

「異世界行きたいなあ」

俺は、思わず声に出してそう言った。すると辺りがゆらゆら揺れ始めた。

「これは…!」

イセイセ(異世界ファンタジーの本を読んでいたら俺も異世界にいた)の19ページ3行目の展開じゃないか!これは異世界に行けるということなのでは?次第に意識は遠のいていく。

ーーーいいぞ、この調子だ。あとは異世界に飛ぶだけk…


目覚めたらそこは、異世界だった。異世界だった。


ーーーあれ?

異世界にしてはなにか変だ。たしかにここは俺の家ではない。でも壁も天井もおかしなところはない。異世界だよな…?

かい、遅刻するわよ、早く学校行きなさい!」

知らない母親の声がする。でも学校があるのか。イセイセだと異世界に学校はなかったはず。てことはここは…現実?俺現実世界に転生したの?何そのしょぼい感じ。しかも異世界との関連性がわからないよ。とりあえず学校には行かないと…

「いってきます!!」

「はーい」

俺は家の中、家の外、なにか異世界っぽいものを探した。でも、ポストも表札も全部現世界のものだった。

伊勢いせ

へー、名字は伊勢か。てことは俺は伊勢 界ってことかー、、、?????え?

伊勢界…いせかい…異世界…

まさかおれ異世界じゃなくて伊勢界に飛んだのか!?なんだよそれ!フィクションかよ!いやイセイセもフィクションだけど!


ん、まてよ?俺が伊勢界に乗り移ったってことは、伊勢界はどこにいるんだ?


なんか嫌な予感しかしないんだけど…


俺は学校に行く。

「界く〜ん♡」

なんだか女子の目がおかしい。俺を見る目は明らかに好意の目だ。

ーーーへー、こいつモテモテじゃね〜か

最初は嫌だったが、ことあるごとに精神科を勧めてくる母親と暮らしてる上に全くモテないし、もはや戻る必要性を感じなくなってきた。このままでいいんじゃないか。伊勢界には申し訳ないけどな。

ーーーーーーーーーーーー

「なあ、悠真今日なんか変だぜ?」


そんなこと言われても。大体悠真って誰だよ。俺は勇者になりたいって言っただけなのに。目が覚めたら知らないやつになって知らない家にいて、母親に

「異世界に行きたいってあんたやっぱり頭おかしいと思うの。精神科行きましょう。」

とか言われて、慌てて家を飛び出したけどランドセル背負い忘れてて、

「やっぱり何か変だわ!」

と追い掛け回されて。散々だ。


「ほんとだ〜悠者ゆうしゃのくせに〜」


今、勇者ブレイブマン、って言った?勇者ヨングサー(韓国語)勇者ムウテェッヒ(ドイツ語)、勇者って言った?

「勇者?」

「悠真の悠に者で悠者。俺らだけのあだ名、どしたの記憶飛んだ?」

向こうは冗談だと思ってるみたいで、もし小説だったら語尾には(笑)がついているだろう、しかし俺はまじで言っている。ていうかそういうこと!?勇者違い?なにそれ掛詞?

ふりゆくものは我が身なりけり?

てかこれいつになったら戻るんだよ、学校にいてもこいつの友達に悟られないのに必死で疲れるけど、家に帰ったら精神科連れてかれるよ…はあ…

「なんか悠者めっちゃ情緒不安定じゃない?ぽくない」

「そ、そうか、かなあ⤴?」

突然話しかけないでくれ、声が裏返ってしまったじゃないか。


放課後。俺は家に帰りたくなくて図書室に籠もっていた。ここが異世界ではなく現実世界なら、多少場所は違えど同じ本があるはず…

「ブレイブマン、その勇ましい一生」

略してブレなま

「先生、ここにブレイブマン、その勇ましい一生っていう本置いてますか?」

とりあえず司書っぽい人に聞いてみた。眼鏡で本が好きそうな感じ。こういうのは結局人に聞くのがベストだ。

『何事も人に聞いて行動したほうが自分の身が安全』

4巻35ページのブレイブマンの言葉だ。

「大人気だからあるとは思うけど…僕生徒だよ?てか一応クラスメイトだよ?え?ネタ?それとも僕のこと知らない感じ?酷くない?僕が陰キャだからって…名前くらい覚えてくれてるかと思ったのに!!」

「あ、あ、ネタだよネタ、あ、ありがとぅ⤴あは、あはは」

とりあえず探そう。

「ぶ、ブルドッグ大百科、ブルルン車の秘密ブレイブ、ブレイブマン…ブレイブマン…あった!!!!!!!」

「図書室の中では静かにしましょう」

今度こそ本物の司書に怒られた。まあいいや、どうせ俺はここから去るんだし…困るのは悠者?だろ?いいよ、知ったこっちゃない。

「伊勢界に戻りたい…家に帰りたい…」

パッ、と目の前が暗くなり、意識を失った。


遠くで、機械音のガイダンスが聞こえた。

『申し訳ございませんが、あなたの体に別の人が入っており、その人は戻る気がないようなので、戻ることはできません。』


ーーーは?









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