避暑地のコテージ


 さて、 やっと避暑地の駅に着きました。

 さすがに高原の避暑地、帝都の暑さが嘘のようです、快適です!

 八月になったら、どうしようと思っていましたからね……

 おやおや、お迎えの馬車がいましたね。


「ご苦労様です」

 女官さんが御者さんに声をかけると、私を乗せ走り出しました。


 そして夏の離宮に到着、広大な敷地に乗り入れると、白亜の建物と、その前に広がる、広場と噴水群そしてお洒落なコテージがあちこちにあります。

 私はその一つに、これから一週間、過ごすことになっています。

 どうやら、付き添ってきた女官さんは、そのまま私の面倒を見てくれるらしいのです。


「王女殿下、こちらがご宿泊場所です、どうぞ、ごゆっくりとお過ごしください」

「あの?出かけることは?」

「申し訳ありませんが、出来ません」

 離宮の敷地、というより、このコテージが属しているエリアよりは、出ないようにといわれました。


 このコテージの属するエリアには、真ん中に通りが走っており、三つづつコテージが建っています、実際、直ぐ隣にもう一つ立っており、少し離れて、さらにもう少し大きい建物が一つあります。

 通りの向こう側には、かなり立派な二階建ての石造りの洋館、奥に平屋の木造建物が二棟……

 どうやら、このエリアには、六つの建物が建っているようですね。


 私にあてがわれたコテージだって、完全な洋館ですよね……平屋の木造建物で、イメージ的には呉にある『入船山記念館』ですかね。

 隣の建物も木造ですが、こちらは二階建て、あえて云うなら『大磯迎賓館』ですかね。

 もう一つの建物は、久光お兄様のお屋敷より大きいような気がします。


「親王殿下は、どうされておられるのですか?」

「親王殿下は、ただいま華族中学の夏山登山訓練で、この地には来られておりません」


「そうですか……」


「王女殿下におかれましては、明日、王国の第六王女殿下とご会談のご予定です、それまではごゆっくりなされてください」

 とは云われましたが、お昼を食べたら、散歩するぐらいで何もすることはありません。


 朝の九時始発の列車に乗り、昼に到着、今十二時三十分です。


「王女殿下、お食事の時間です」

 と云われましたので、お昼となりましたが、女官さんと二人だけで食事……

 料理は、別のところで作られ、運ばれてくるとか……

 それを女官さんが、暖めて出してくれるのです。


「王女殿下、皇后様より、昼食後からはお一人にせよ、と申しつかっていますが、なにかご用があれば、私は通り向こうの建物に、皇太后様付きとして詰めておりますので、申しつけてください」

 えっ、あの前の建物は、おばあ様がお泊まりになる建物なの?

 

 なら、今夜は一人でゆっくりしたいので、ご飯も遠慮して、好きなモノを取り寄せましょうか♪

 ネットスーパーなんて便利なモノもありますからね。

 即日配達なんてスーパーもあるのですよね♪ 


「お隣はどなたが宿泊を?」

「王国の第六王女殿下とお聞きしております」


 で、お食事の後、仕方無いのでお散歩をする私です。


 小一時間ほどでお散歩も終わってしまい、一人お茶会なんてね、暇つぶしですね。


 で、コテージに戻ろうとすると、隣の家に馬車が停まり、なかより私ぐらいの女の子が、女官さん達に取り囲まれ降りてきたのです。

 黒い髪で瞳がスミレ色?、そういえばこの瞳の色の、某イギリスの大女優の子役時代に似ているような……絶世の美少女ですよ。


 王国の第六王女殿下のようです。 


 私からご挨拶することにしました。

「こんにちは、私は岩倉姫宮雪乃と申します、一週間、お隣に宿泊することになっております、短い間ですが宜しくお付き合い願います」

「ダイアナ・スチュアート……です……」

  

 王女殿下は、かなり恥ずかしがり屋さんのようでした。

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