女らしさ


 四月七日、帝国第一高等女学校の入学式です。

 嬉しいことに、この女学校の制服は洋装です。

 振り袖、袴の女学生でも良かったのですが……セーラー服にはあこがれていたのです。

 セーラー服といっても、ロングのスカートですよ。


 私、本当は女だったのに女性仮性半陰陽……学生服ばかりでした……

 恋もしたかったし……でも、女の子とも……神様はそんな心をお見通し?


 朝、軽く洗顔、歯磨き、をして、食事が終わると、

 また今度は念入りに石鹸で顔の汚れを落とし、保湿の為に糠で顔をなで、水おしろい――リキッドファンデーション――をつけます。

 これがお化粧なのですよ。

 

 帝国第一高等女学校も『水おしろい』は認められているのです。


 さて、ハル様が用意してくれた、乳バンドをつけ、肌着を着て、靴下吊り、つまりガーターベルトをつけ、靴下を吊ります。

 股引き?ズロースの事でしょうが、カボチャパンツの様なモノをはき、長い下着スカート、つまりペチコート?を着て、やっと制服を着ます。

 乳バンドとはブラジャーですが、十三歳の私は少しばかりバストが膨らんできており、ハル様が女児用の乳バンドを、急遽用意してくださったのですよ!


 女学生といえど大変です……

 私、これでも伯爵家のご令嬢ですから、下着や靴下は絹です。

 この後、髪を整えます、でも一人で整えるのは大変です!


 入学して知ったこと……女学校は『レズ』の巣窟である……

 帝国第一高等女学校はそうでもないということでしたが、あちらこちらで恋文が飛び交い、女同士で手を繋いでいるのですね。

 

 学科についてですが、私の調べた高等女学校の科目とよく似ています。

 外国語は王国語、三時間あります。

 裁縫が四時間もあります……


 週28時間、どうやら、木曜、土曜は半ドンのようですね。

 ちなみに木曜の四限、お昼前の授業は、全学年合同の体育、となっています。

 

 入学式ののち、指定された教室に入り、まず席を決め、入学ガイダンスがありました。

「最初の授業は合同で修身です」


 修身ね……チラチラと見ると、やはり高等女学校用の修身の教科書の様な内容です。

 一年生用は、生徒心得とかね、ただ学年が進むと、どうやら夫に対しての献身、妻と妾のあるべき姿などを叩き込むようですね……

 まぁ、生徒心得が最初ですから、合同で行うのも道理ですね。

 今日はこの授業で最後です。


 『解析』を発動しますと、貞淑な妻、従順な妾、そしてなんと『夫を満足させる伴侶』としてあるべき姿なんて、教えるようです。

 勿論、徹底して貞操観念を叩き込むのでしょう。


 でも……神様の条件には……


 理想の女性としての容姿、才能を与える。

 体力、思考なども全て女性となる。

 健康については保証する。


 とありましたが、どうも、この世界の理想の女性観が馴染んで行くようで……

 生理が始まり、女性ホルモンが分泌されはじめて、思考も女らしく……この女らしくとは、この世界の女らしく、ということのようです。


 間違いなく、この世界は女が男に尽くすのが当然という世界、男女平等なんてかけらもありません。

 前世の『婦人運動』なんて絶対ない、といえるでしょうね。


 勿論、婦人の独り立ちはなんとか可能ですが、多大な困難を伴います。

 それも社会の補助的なというか、国家の指導者とか、組織の頂点とかはあり得ないのです。

 女は男に守られる、よって女は男に従う……


 それが女学校の修身の要旨でしょう。


 それでも帝国第一高等女学校はましな方で、華族高等女学校などはもっと徹底して、『この世界の女性のあり方』を教え込むようです。

 夜ごとのことも教えるとか何とか……

 

 さて、クラスメートは40名、一学年二クラスですので、400名が在学しています。

 普通は一学年最大150名、三クラスのようですが、帝国第一、第二高等女学校は少数精鋭のようですよ。


 不思議なことに、この女学校は男性教師はいません、帝国第一、第二高等女学校と華族高等女学校は男子禁制なのですね。

 この三校の女学校は女の園です。

 あとは華族高等女学校附属の『尋常女子小学校』も女の園、華族高女の『尋常女子小学校』などに入学すれば、思春期は男知らず、華族高等女学校を卒業する頃には、理想の貞淑な妻、従順な妾、上流階級の妻妾養成機関なのですね。


 さて、初めてのミズホの国の、女学校の授業を受けましょう。

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