実際の歴史的事件にオリジナルキャラクターを絡ませる、という発想自体がまず野心的です。「ターニャがいなかったら今の世界情勢は変わっていたかもしれない」という前提のもとに、原子の炎やクメール・ルージュといった重い史実を扱いながら、「なぜこうなったのか」を解き明かしていくIF小説としての構成が丁寧でした。
レビューにもある通り、ターニャという存在が天使なのか悪魔なのか、善悪のどちらにも振れる曖昧さを保ち続けているのが本作の核心だと思います。歴史を俯瞰する視点を持ちながらも、個々の選択や感情の重さを切り捨てない筆致が、単なる歴史改変ものとは違う深みを与えています。
全8話、34,998文字というコンパクトな中に複数の歴史的事件を織り込みながらも一貫したテーマを通している構成力に、作者の初期作とは思えない手応えを感じました。