文学と金と酒

 文学者とは金を持たない生き物なのだろうか。それとも、ただ単純にそういう時代だったのだろうか。小説一本で豪邸を建てたと言う話より、今より遥かに質の悪い酒を飲みながら、人の家の二階を間借りしていたいう話の方が多い。気がする。そしてそういう混沌の時代が、少し羨ましかったりもする。定職に就かず、借金をし、家を転々とし、煙草と排ガスの中を彷徨う。当然、苦しい。いいじゃないか、それで。傑作は苦痛から生まれるものだ。己の生活を、血肉を賭けたその中に、面白さが詰まっている。

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