十五章 「とびっきりの幸せを」
「汝は病める時も健やかなる時も胡桃沢萌を愛する事を誓いますか?」
大きなピアノがあり、ステンドグラスが壁一面にあり、天使の絵が描かれた純白の教会の中で、私達は愛を誓う。
白で統一された世界。
バージンロードは透明で、透けていて綺麗だ。
なんて美しいのだろうか。この世にこんなに美しい場所は他にない。
参列してくれた人は100人近くいる。
この一人一人が私達の幸せを祈ってくれていると考えると、幸せの多さに胸がいっぱいになる。
私達はあれから一緒に時を過ごし、一年後だった結婚式を挙げている。
「誓います」
胸が嬉しさできゅーっとした。
牧師は続けて私の方を見る。
「汝は、病める時も健やかなる時も黒瀬諒を愛する事を誓いますか?」
「誓います」
私はウエディング姿をゆっくりと見た。彼は綺麗だよと言ってくれた。これをずっと着たいと思っていた。子供の頃から結婚式に夢と希望を抱いていた。
「では、誓いのキスを」
彼の顔が近づいてくる。
その時私は小さな声で「ありがとう」と言った。
あなたに出会えてよかった。あなたに出会い、私の世界は一瞬で変わった。あなたが私の心をさらっていき、私の中心になった。あなたがいなければ私の世界はもう輝かない。あなたなら信じられる。あなたをずっと愛していたい。あなたに不幸が降りかかったとしても、世の中が私達のことを引き裂こうとしても、万が一あなたが私を裏切ったとしても、私はあなたを愛し抜く。どんなことがあっても愛し抜く。
そんな気持ちをまた今度伝えようと思った。
今はただ幸せな世界に浸っていたい。
彼はニコッと笑ってキスをしてくれた。
彼の笑顔がやっぱり一番好きだ。何度その笑顔に救われただろうか。
その瞬間、紙吹雪が舞い、クラッカーが私達の未来のスタートを合図するかのよう盛大に音を鳴らした。
こんな演出聞いてない。
ちゃっかり牧師もクラッカーを手に持っているし。
彼を見ると、してやったりと言う顔をしている。
いつも彼はこんな洒落たことをする。私は毎回びっくりするんだからその気持ちも考えて欲しい。
なんだかわけもわからない悔しさにかられた。
でも、私達らしいと思った。
これが私達の幸せなんだとしみじみ思った。
いくつもある選択肢の中から、私達が選んで手に入れた幸せ。二人だから見つけられた幸せなんだ。
そんな風に思っていると、彼は近づいてきて笑顔で「あなたの未来を変えられると言ったら、あなたはどうする?」と言ったのだった。
選択的恋愛 桃口 優/最愛を紡ぐ作家 @momoguti
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